バイトダンスが売り出しているTikTokのアルゴリズム
ティックトックで1時間に消費できるコンテンツの量について考えてみよう。
各動画が最大の60秒で作成されているとしたら60作品を見ることができ、連続で60 人の新顔に出会い、彼らの世界の扉を開くことができる―つまり、彼らをフォローし、スーパースターの地位に押し上げるチャンスがそれだけあるということだ。
対照的なのがユーチューブだ。
ユーチューブでは、動画をあちこち回ってささっと視聴する人が減り、代わりにソファに座って長編のドキュメンタリーを見る人たちが増えているため、動画の平均的長さはどんどん長くなって、ファンをつくるのがさらに難しくなっている。
ティックトックの動画の長さはスイートスポットにヒットした。人はすぐには退屈しないもので、絶えず新しくて風変わりなコンテンツをつまみ食いしている。
これは、すぐさまユーザーの注意をつかみ、内容にひとひねり加えることでドーパミンを放出させて満足感を与え、続けて次の動画を見る気になるよう、クリエイターが設計したものだ。
だからこそ、ティックトックは非常に人気が高いのだ。延々とスクロールし、指先が止まった先に入念に選んだ動画が出てきて自由にフリックできるなら、決して退屈することはないだろう。
ティックトックをここまでに押し上げた第二の要因はそのアルゴリズムだ。
それはティックトックだけでなく、バイトダンスの製品すべてを強化し、会社全体のマネーメイカーになっている。
実際のところバイトダンスは、画像認識やコンピュータービジョンといったアプリに、そのコンテンツや他のテクノロジーを引き渡すメカニズムを商業的に利用してきた。
中国では、バイトダンスはそのアルゴリズムやその他のツールのホワイトラベルを〝ヴォルケーノエンジン(火山引擎)〟というブランド名で1年以上前から売り出していたが、内部関係者から聞いたところでは、2021年4月に同システムをバイトプラス(BytePlus)のブランド名で西側の企業に販売するため、シンガポールでスタッフを雇い始めた。
ティックトックはアテンション・エコノミーにしっかりと根付いたアプリ
誰が作り誰が作っていないかを記録するユーチューブのアルゴリズムと同様に、ティックトックのアルゴリズムは複雑で、外部の人間にとっても多くの内部関係者にとってさえ、おおむね不可解なものだ。
イギリスでティックトックの編集チームのチーフを務めるヤズミン・ハウにそれがどう機能するのか尋ねたところ、「それはアルゴリズムチームでさえ答えを出せない質問ですよ」と困惑していた。「とても精巧にできているんです」
ただ、アルゴリズムに適した動画の作り方についてのヒントはある。「明るい照明のもとで撮影することです」とハウは言う。
「そこそこまともな品質にすること。特別洗練されている必要はありません。人気の出るコンテンツの99パーセントはこのプラットフォームで作成されたもので、リアルな内容の動画です」。
ティックトックはアテンション・エコノミー(関心経済)にしっかりと根付いたアプリだ―つまり、ユーザーの興味を即座につかめなければ、すぐにはその先へ進めない。ハウはこう言う。「ユーザーとして最初の3秒で心をつかまれたら、たいてい最後までその動画を見てしまう。そしてそれがどんどん多くの人たちに広がっていくんです」