後編〈カニ足4本3万円〉“ぼったくり”の批判相次ぐ黒門市場、店の言い分。新規店は「ここなら儲かる」とやる気満々、古参は「インバウンド前から地元客は来なくなってた」と本音を吐露はこちら
外国人観光客増で生活商店街から“インバウンドの聖地”に
昨年10月の新型コロナの規制緩和をきっかけに、訪日ブームが再燃。日本政府観光局(JNTO)が発表した2023年5月の推計値によると、外国人観光客の数はコロナ前の2019年同月比の68.5%にあたる189万8900人にまで回復している。
そんな外国人観光客から圧倒的な支持を集める場所のひとつが、大阪・難波にある商店街「黒門市場」だ。
黒門市場の歴史は古く、江戸時代後期の1822~1823年にまでさかのぼる。市場の近くにあった圓明寺の黒塗りの山門、すなわち黒門の前で鮮魚商人らが市を開いたのがその起源とされている。
キの字型に伸びる総距離約580メートルのアーケード街には、鮮魚をはじめ、青果、精肉、漬物、乾物、食堂など140軒以上の店が立ち並ぶ。質の高い”ほんまもん”の品物が手に入るとあって、難波の飲食店の仕入れから一般客まで、多くの人々が往来している。
黒門市場を訪れる外国人観光客が増加したのは、2011年ごろから。円安やビザ緩和対策、関西国際空港へのLCC就航などが重なり、その口コミによって生活商店街から“インバウンドの聖地”へと変化していったのだ。
インバウンド需要があるのは地元にとっていいことのように思えるが、実はそればかりではないらしい。
実際、Twitterで検索してみると、「黒門市場は変わってしまった」「高すぎて行かない」といった投稿も目立つ。旅行業界関係者が語る。
「もともと黒門市場は『ある程度高いけど、質の良いモノが手に入る』という信頼感があった。しかしインバウンドの影響で、外国人観光客に合わせた“観光地価格”に値上げする店が増えていき、地元の常連客が離れていった」