売れ残るコダマさんオーダーのおつまみ
三人とも茶髪に真っ赤な口紅、ジャージにジーンズというわかりやすいヤンキースタイルをしています。三人とも顔は相当にかわいいのですが、そこはヤンキーです、言葉遣いが半端ではありません。
「おー、カミムラァー、遅かったなー」
「あっ、オオシロですよろしくお願いします」
「ヨロシクネー」
「コダマです、よろしくお願いします」
リーダー格の女の子が言いました。「おい、カミムラァ、先公連れてくんじゃねぇーよ」
「いや、同じクラスの生徒なんや」
リーダーが急に大声を出しました。
「おっさんやんけー。カミムラァ、コンパやぞ、高校生連れて来い言うたやろ」
「いや、だから高校生なんや。定時制やから、いろんな人がおんねん」
リーダーが、今度はコダマさんに向かって言いました。「おまえ、マジ、高校生かー」
「三年B組、コダマジロウです。よろしくお願いします!」
どうにかこうにかリーダーが納得してくれたので、無事、六人で乾杯をすることができました。コダマさんはわりと酒に弱いらしく、少し飲んだだけで顔が真っ赤になってしまいました。
会話が盛り上ってくると、反比例してコダマさんは寂しそうな顔になっていきました。なにしろ、伊丹K高の△△がもと天O中(天王寺中学のこと)の××と喧嘩したとか、誰々はスカイライン乗ってるとか、誰々はシルビア乗ってるとか、そういう若い会話ばかりになってしまったからです。
コダマさんの寂しさに拍車をかけたのは、つまみでした。コダマさんが頼んだ漬物の盛り合わせ、サラダ、冷やっこといったさっぱり系のつまみに、女子高生軍団は誰ひとりとして手をつけようとしなかったのです。