野党競合の末に、
漁夫の利を得て笑うのは自民党
ゴールデンウィーク明けの5月8日には、立憲の若手、中堅議員有志32名が「競合も辞さず戦う覚悟と決意を鮮明に示すべきであり、最低でも200以上の選挙区で与党に対抗できる強力な候補者を擁立すべき」とする緊急提言を泉健太代表に提出。
その2日後に開かれた両院議員懇談会では、泉代表が維新を念頭に「自民党の一部と同じような政策の新自由主義や、自助ばかりを強調する政治、核共有を検討するというような政治は対立軸にならない」と主張。
「立憲こそが自民党に代わり得る政権勢力の国民が望む選択肢である」と旗幟を鮮明にさせた。
この会合では統一地方選や衆参5補選の結果を受けて、立憲が次期衆院選に向けてどう臨んでいくかが話し合われたが、候補者擁立を積極的に進めることには賛同が相次ぎ、維新との候補者調整について話は出なかったという。
他方、今から候補者擁立を急ピッチで進めていくことについては不安の声も漏れる。
立憲関係者は「これまで候補者として目をつけていた人から『今の立憲から出馬するのはちょっと…』と断られるケースも出ている。これから積極的に擁立しようとしても、公募への応募が殺到している維新に候補者数で負けてしまう可能性すらある。そうすると、選挙前から『自民VS維新』という構図に見られ、厳しい戦いを強いられてしまう」と嘆いた。
まるで競争するかのように全国各地で候補者擁立を進める立憲と維新。
だが、両党の競合が増えるほど、立憲は勢いづく維新に無党派層の浮動票を食われ苦戦し、一方で維新も自民と立憲を下して選挙区で勝ち残るには、関西圏以外ではまだまだ力不足と言えるだろう。
過熱する候補者擁立競争の先に待っているのは、両党が共倒れして野党が焼け野原になってしまっている未来かもしれない。
立憲若手議員は語る。
「もう維新と全面対決するしかないが、結局両党とも落選者が続出して、比例復活でどれだけ議員を救えるかという悲しい戦いになりそうだ。しかし、もう引き返せない」
このままいけば、最後にほくそ笑むのはやはり自民党になりそうだ。
文・写真/宮原健太