勢いづく維新と、混乱状態にある立憲
維新は衆院選で289ある全ての選挙区で候補者を擁立することを目指しているが、現在は現職41人と、各選挙区で活動する支部長29人にとどまっており、空白地帯が多いのが現状だ。
冒頭で触れた統一地方選落選者に対するオファーも、衆院選に向けて積極擁立を進めていく中での勧誘だったと言える。
「地方議員などの経験がある人を候補者として迎え入れることにより、擁立が進むだけでなく、競合を減らすこともできる。一石二鳥だ」と維新関係者は話す。
また、統一地方選での躍進の効果か、わざわざ維新側からオファーをしに出向かなくても、候補者への応募が殺到するような状態になっているようだ。
実際、5月10日に維新の馬場伸幸代表と面会した地方選の落選者によると、馬場氏は「衆院選候補者へのエントリー説明会に200人以上、維新がやっている政治塾には300人以上の申し込みがあった」と豪語していたという。
こうした維新の勢いとは裏腹に、苦境に立たされているのが立憲だ。
立憲は衆議院の現職が97人、衆院選候補者に内定して各選挙区で活動する総支部長が41人と、既に100人以上の戦力を抱えているが、野党第一党として選挙戦を戦うにはさらなる候補者の上積みが必要となる。
実は立憲はこれまで候補者擁立を抑えてきた。2021年衆院選に出馬し、その後も自前で地元活動を続けているが、未だに総支部長に選ばれていない人もいるほどだ。
その理由には、維新との選挙協力を視野に入れていたという事情がある。
昨年の臨時国会から立憲は維新に国会内で共闘することを持ちかけ、共に法案を提出するなど連携を深めてきた。
これまでの国政選挙で立憲が議席を減らし、維新が議席を増やす中で、与党と対峙するのに両党が手を握ったほうがスケールメリットが働くという事情もあったが、ゆくゆくは衆院選において立憲と維新で候補者調整をし、与党と対決するという構想も描いていた。
そのため、維新と柔軟に調整ができるよう、地元で活動している人がいても総支部長には選任せず、様子見をしている地域がいくつかあったわけだ。
しかし、維新が統一地方選で躍進し、「野党第一党を目指す」と立憲との対決姿勢を強めると、立憲内でも「維新に遠慮せず候補者を積極的に立てるべきだ」という主戦論が意見の大半を占めるようになってきたのだ。