侍打線が見せた唯一の「死角」
さて、今大会で好調な打者に共通しているのは、ストライクゾーンに対する見極めだ。近藤健介が良い例だが、結果を出せている打者は、総じてストライクゾーンに来た球をしっかり叩けている。
「今度は流してみようとか、引っ張ってみよう」といった意思が、打席から感じられる。それはストライクゾーンをしっかり把握できているからだ。
国際大会の審判は各国から派遣された人達が多く、かつてはその日によってゾーンがマチマチだったと聞いていた。しかし今回見る限り、極端に日本と違う感じはしなかった。調子の良い打者も、早いうちからそれを察したのだと思う。
ただ、好事魔多し、という言葉がある。打線は水物。ましてや相手が日ごとに変わる国際大会では、今日打てたからといって翌日も同じように打てる保証はない。
それに東京ラウンドは、率直に言って日本とは実力差があるチームばかりだったから、打ったといってもあまり手放しでは喜べない。そこで私が着目したのは、日本打線が打ちあぐね、抑えられたイニングだ。
たとえば3月10日の韓国戦。結果的に13対4で大勝したが、初回、2回の攻撃は、5三振を喫して封じられたイニングだった。以下にスコアを記そう。
1回表
1番 ヌートバー センターフライ(スライダー)
2番 近藤 空振り三振(ストレート)
3番 大谷 空振り三振 (スライダー)
2回表
4番 村上 見送り三振(ストレート)
5番 吉田 セカンドエラーで出塁
6番 岡本 空振り三振(チェンジアップ)
7番 牧 空振り三振(チェンジアップ)
3回には相手先発の金廣鉉(キム・ガンヒョン)捕らえて、長短打で4点を取って引きずり下ろしたが、あれは彼のガス欠からくる自滅。3回になった途端、球速もボールのキレも落ち、それまでとは別の投手のようだった。