苦戦のチームに「なにが3年連続3冠だ」

加熱する“能代工フィーバー”の国体で、誰もが「一番しんどかった」と口を揃えていたのが準々決勝の沖縄高戦だった。前年の国体で能代工単独チームの秋田を警戒させた、あの安里幸男が率いる難敵だ。しかも、この日はダブルヘッダーで、勝利した兵庫との試合からインターバルがわずか3時間しかなかった。

「1試合目からずっとコートの往復ですからね、とにかくしんどかった。しかも、沖縄はうちを研究しているチームだし、ゾーンディフェンスでハメようとしてもなかなかうまくいかない。『これはヤバいな』と」

田臥勇太がもみくちゃに…異常だった能代工フィーバーから24年。“高熱でダウン”田臥らメンバーが明かす「9冠の舞台裏」_3
現在の若月徹さん

センターの若月がそうつぶやくように、序盤から選手たちの動きが鈍い。前半は36-36。後半も拮抗するなか、監督の加藤三彦がチームを突き放す。

「なにが3年連続3冠だ……もういいから、お前らでやれ!」

監督の檄で選手たちの尻に火が付く。着火剤は、またも菊地の3ポイントだった。

兵庫戦で2本しか決められなかったのが嘘のように立て続けに決まる。この試合で14得点だった田臥をカバーする38得点を挙げ、80-73で辛くも逃げ切った。

準決勝でも強豪の新潟に84-60で勝利し、迎えた京都との決勝。今度は田臥が見せた。

開始10分で10点ビハインドと劣勢のなか、積極的に仕掛けることで局面を打開し、逆転に成功。チームトップの34得点で87-64と相手を退け、9冠に王手をかけた。

9冠に王手…しかし

しかし、未踏の頂に近づくほど道は険しくなるのだと、選手たちは実感することになる。

12月のウインターカップ初戦。能代工は法政二高に序盤から苦しめられた。シーソーゲームが展開されるなか、前半残り7分のタイムアウトから、アウトサイドからシュートを多投し、オールコートプレスでスティールを仕掛けることで点差を広げ勝利することができたが、99-77の点差以上に心は疲弊していた。

「やっぱり、簡単には勝たせてもらえないな。意外にヤバいかもしれない」

菊地が危機感を募らせれば、若月も「1個、1個『勝たないとマズい』と思いながらやっていました」と同調していた。