トム・ハンクスが表紙に登場したワケ

いまでも第一線で活躍するハリウッド俳優が、1995年に初めて表紙を飾っている。「『フォレスト・ガンプ』を見よう!!」という特集とともに、4月号の表紙に登場したトム・ハンクスである。ハンクスと言えば、『スプラッシュ』(1984)をきっかけに、80年代はコメディ映画を中心に活躍してきた。90年代に入ると、『プリティ・リーグ』(1992)『めぐり逢えたら』(1993)と徐々に役柄を広げ、エイズ患者を演じた『フィラデルフィア』(1993)でアカデミー主演男優賞を受賞している。

徹底したビジュアル重視主義の「ロードショー」が、その実績・人気からあえて表紙に起用した実力派俳優とは?_02
『フォレスト・ガンプ』以降、『ジュラシック・パーク』のような娯楽大作のものだったVFX(視覚効果)は、人間ドラマにも持ち込まれていった
©ロードショー1995年4月号/集英社
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これほど長く活躍しているのに「ロードショー」の表紙と縁がなかったのは、残酷な言い方になるが、イケメンじゃないからだ。平凡さ、親しみやすさが、映画俳優トム・ハンクスの最大の魅力だが、「ロードショー」はぶっちゃけアイドル誌でもある。どれほど演技がうまくても、アメリカで人気があろうとも、部数に貢献できないスターは表紙に起用できない。

逆に言うと、今回の表紙初起用は、トム・ハンクスが無視できない存在になったことを意味する。『フィラデルフィア』に続いて『フォレスト・ガンプ 一期一会』(1994)でもアカデミー主演男優賞を受賞。しかも、後者は1995年の配給収入ランキングで3位になる大ヒットとなっており、さらに6位の『アポロ13』(1995)にも主演している。ピクサーの『トイ・ストーリー』(1995)でもウッディの声を担当しており、ハリウッドの話題作、良作には必ず出ているのだ。現在でも「ハリウッドの良心」的な存在として、製作・出演の両面で大活躍しており、遅まきながら表紙に起用したのは正解だった。

なお、1995年3月号から付録で「ROADSHOW文庫」なる付録がスタート。出演作や人となりをまとめた冊子で、第1巻はハリソン・フォードで、オードリー・ヘプバーン、キアヌ・リーヴス、トム・ハンクス、ジョディ・フォスター、ブルース・ウィリス、ウィノナ・ライダー、ケヴィン・コスナー、ジャッキー・チェン、リヴァー・フェニックスとビッグスターが続いていく。まだ、インターネットが普及していない時代において、人気俳優の詳細な情報を提供していた。

◆表紙リスト◆
1月号/ブラッド・ピット 2月号/サンドラ・ブロック※初登場 3月号/デミ・ムーア※初登場 4月号/トム・ハンクス※初登場 5月号/メグ・ライアン 6月号/ジョディ・フォスター 7月号/キアヌ・リーヴス 8月号/ウィノナ・ライダー 9月号/ニコール・キッドマン※初登場 10月号/ウィノナ・ライダー 11月号/クリスティーナ・リッチ※初登場 12月号/アリシア・シルヴァーストーン※初登場
表紙クレジット ©ロードショー1995年/集英社