男優スター圧倒的優位時代
2005年の表紙をずらりと並べると、ある異変に気付く。女性はシャーリーズ・セロンのみで、他すべてが男性なのだ。創刊当初から「ロードショー」の表紙は、カトリーヌ・ドヌーヴ、ファラ・フォーセット、フィービー・ケイツと、その時代を代表する女神たちが彩ってきた。70年代はアラン・ドロン、80年代はジャッキー・チェンやリヴァー・フェニックスが登場することもあったが、女性優位は揺るがなかった。
変化が起きたのが90年代で、ブラッド・ピット、レオナルド・ディカプリオの台頭もあって、男性比率があがりはじめる。そして、00年代になると完全に逆転し、ついに女性ひとりにまで追いやられてしまったのだ。
表紙は雑誌の顔だから、編集側の思惑もあるだろう。読者層の変化や『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのブーム(オーランド・ブルームが3回、ジョニー・デップが3回)に対応したのだと想像できる。
だが、洋画誌ゆえに、アメリカ映画の変容が影響を及ぼしていることは間違いない。この頃からハリウッドは大作主義を加速させていく。それまでのハリウッドは、ざっくりというと、大・中・小、3つの価格帯の映画を製作していた。大は万人向けの大作映画、中はロマンティックコメディやサスペンス、小は野心的な低予算映画だ。
しかし、00年代になると、VFX 満載の大作映画が相次いで大ヒットを飛ばしたことから、中規模の製作を控え、大作を優先するようになった。予算が増えると、それだけリスクも高くなる。そこで、すでにファンが存在する原作モノばかりにゴーサインが下りていくことになる。2005年の興行収入ランキングをみても、1位の『ハウルの動く城』(2004)のあとに続く『スター・ウォーズ シスの復讐』『宇宙戦争』『チャーリーとチョコレート工場』(すべて2005)は、スター主演作であることはもちろん、いずれも「原作もの」である。
この頃の大作映画で主役を張るのはたいてい男性である。おまけに中規模映画が消滅してしまったことより、女優が活躍できる場所が減ってしまったのだ。