ジョニーにお任せ時代到来
2006年は、全世界待望のシリーズ第2弾『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマン・チェスト』が製作・公開。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)につづいて年間興行収入2位のヒットを記録し、ブームが最高潮に達していたことから、ジャック・スパロウ役のジョニー・デップが表紙を6回も飾っている。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の大ヒットでデップのギャラも高騰。前作『呪われた海賊たち』(2003)では1000万ドルだった出演料が、『デッドマン・チェスト』では2000万ドルに。しかも、興収に応じてロイヤリティを受け取ることができるバックエンド契約を結んでいたため、本作だけで6000万ドルを手にしたといわれている。その後の続編でも同様の条件を獲得していたため、『パイレーツ・オブ・カリビアン』全5作への出演で3億ドル近く稼いだようだ。
デップは、2004年に製作会社インフィニティ・ナイヒルを立ちあげる。国際的スターとなった自らの知名度を生かし、自分好みの映画企画の実現に乗り出したわけだ。かくして、『ラム・ダイアリー』(2011)『ダーク・シャドウ』(2012)『ローン・レンジャー』(2013)『Minamata』(2020)などが生まれたが、いずれも批評・興行ともに成功したとは言いがたい。皮肉にも彼が出演していない『ヒューゴと不思議な発明』(2011)が同社が関わった作品では最大のヒットとなっている。自分の世界観を持った個性的なアーティストには、映画のプロデュースは荷が重かったようだ。
さらに、突然、途方もない大金が転がりこんで金銭感覚が狂っても不思議はない。デップは金目当ての連中に囲まれ、プライベートで誤った判断を下していくことになる。長年連れ添って2子をもうけたヴァネッサ・パラディを捨てて結婚したアンバー・ハードとは、離婚の末、泥沼の法廷闘争を繰り広げることになるが、トラブルはこのときに始まっていたのだろう。