「好きな声」があふれた面白い未来へ

―― 『VOICEPEAK』は今後のアップデートも予定されているのでしょうか?

尾形 周囲の反応がとても良く、予定より前倒しで発売したので、ユーザーインターフェースや書き出し形式など細かなところの調整を行っています。追加の音声販売も予定していますが、さらに先も見据えて、音声がより自由に扱えるようになった面白そうな未来についても議論しています。

人間と区別がつかない!? 超自然なAI音声合成ソフト『VOICEPEAK』開発秘話_b
『VOICEPEAK』の操作画面

カンル 私たちのエンジンの特徴のひとつは、動作が軽くて、スタンドアロンで使えることです。クラウドではなくローカルで処理できるので、PCやスマホ以外のものにも組み込んでいけるでしょう。

尾形 人間の1番のインターフェースは「会話」だと思っていて。たとえば電子レンジを使うにしても、わざわざダイヤルやボタンで細かく設定して操作するのではなく「温めておいて」という一言で終わりにしたい。自動運転の車などがイメージしやすいですが、今後はいろいろな人工物と声でやりとりするようになると思うんです。

そうなると、使う人にとって心地よかったり、好きだと思える声であることが重要になります。私自身が声フェチということもあり、世の中を良い声で溢れさせたいし、後の世代に多様な声を残すアーカイブ事業にも取り組みたいと思っています。今でも「自分が死んだ後の葬式で、自分の声で挨拶させたい」なんてお話をいただくこともあるんですよ。

―― それはなかなか刺激的な光景ですね……! PCやスマートフォンに限らず、家電や自動車など、いろいろな人工物が「良い声」で喋る光景は楽しそうです。

尾形 ここ数年で Podcast やTwitterスペース、Clubhouse などの音声メディアに触れる機会がグッと増えましたよね。キャラクターものや創作界隈から広がった音声読み上げソフトですが、今ではまったく毛色の違う文化圏や業種でもニーズが生まれています。今後も新しい技術や需要を取り入れつつ、皆様に面白いと思っていただけるような製品を提供していきたいと考えています。