「金太郎、惑う。」(集英社文庫・コミック版9巻収録)

金太郎が将来の社長候補に?

不倫は、いきなり始まるものではない。二人きりになる、自分・相手が好意を確かめ合う、距離が縮まる――。そうした“まずい条件”が重なった先に、一線を越えるかどうかの瞬間がやってくる。

『サラリーマン金太郎』第84話は、まさに微妙な関係の男女を描いた回だ。

この回で金太郎は、川井会長の孫娘・千秋とツーリングに出かける。千秋はすでに金太郎に好意を抱いているようすで、金太郎も千秋のことが気になる様子。だが金太郎はなんといっても新婚。妻の美鈴からは「浮気しちゃダメよ」と釘まで刺されている。

それなのに金太郎は千秋とバイクでツーリングに行ってしまう。金太郎の心の中で「ここで引き返そう」「何やってんだ、俺は」としきりに自問自答する。金太郎もこの展開はまずいと思っているのだ。

だが途中で豪雨に見舞われ、パンクまでして、二人は山小屋に避難することになる。若い女性と二人きり、しかも濡れた服を乾かさなければならない……という最高であり最悪の展開に。

不倫の怖さは、最初から裏切ろうとして始まるとは限らないところにある。なんとなく気になる相手と、流れのまま距離が縮まり、気づけば引き返しにくくなっている。84話の金太郎も、まさにその危うい場所に立たされる。

なお、美鈴は女をとっかえひっかえする男のことを「女を女としてしか見てないからできる」と指摘し、金太郎は「女」を「人間」としてみるから、そんなことはできない、関係を持った相手とは簡単に別れられなくなると指摘していた。

まっすぐで情に厚い金太郎だからこそ、この状況はなおさら危ない。新婚早々、こんな展開になってしまって大丈夫なのか。このハラハラ展開を、ぜひ漫画で読んでほしい。