「親心」という善意

保護者の進学期待を得て、高校生自身が大学進学を目指したとしても、「地方」の女子には「壁」が残されている。それは、「居住地から通える範囲の大学かどうか」である。

「地方」では県内の大学収容力に限りがあるため、県外進学を検討しなければならないが、その場合「下宿」をすることになり、費用が上昇する。

再び、日下田岳史の『女性の大学進学拡大と機会格差』を参照しよう。

大学の授業料が増加するほど、また高卒後すぐに働ける見込み(機会費用)が高いほど、保護者は下宿コストを抑えようとするが、それは女子にのみ強くなる傾向にあり、背景には保護者が大学進学貸与型奨学金という「ローン」を娘には背負わせまいとする「親心」の存在があるという*1

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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居住地の労働条件

「地元に残りたいな」と考えていたとして、大卒であることが給与面に反映されないとしたら、それでも費用をかけて大学進学するだろうか?

高等教育に詳しい朴澤泰男の『高等教育機会の地域格差』では、出身県内で働く見通しが高いならば、短大卒と大卒との間の収入差が大きくならない地域も存在し、経済的には大学進学が「ベストな選択肢」とは限らないこともありうることが指摘されている。

この場合、内部収益率を考えると、短大へ進学した方が経済的利点は大きいことになる。また、出身県における将来の正規雇用の可能性が低い県ほど、女性の県外進学率と大学進学率が低い傾向にある。

大学数が少ない「地方」であれば県外へ進学する可能性が高まり、余計に教育費が必要となってしまう。日本では、大学進学における家庭の私費負担割合が非常に大きいため、家庭の所得や保護者の方針も、大学進学に影響を及ぼすことになるだろう。

大卒の経済的利点が少ない地域では、わざわざお金をかけてまで大学へ行く必要性も大きくない。県内外にかかわらず、女子は大学進学という「投資」を経済的に回収できる見込みが不明瞭なことが多い。

県外進学となれば教育費用だけでなく、生活費用も含めて支出は増大し、「投資」のリスクが高まるだろう。それにもかかわらず、大学卒業後に地元で安定した就職口がなく、あったとしても短大卒の待遇と大差ないのであれば、リスクを背負ってまで大学進学するメリットがどれほどあるのか、筆者は簡単に判断できない*2

こうした社会的条件が高校生の進路選択に制約を課すことになり、特に「地方」の女子は、その制約が大きくなる傾向にある。

「地方」の女子が(特に県外へ)大学進学するためには、「なんとなく」では周囲が納得しないだろうし、「大学で学ぶ意志」や「県外大学へ進学する明確な目的」といった「大義名分」が、男子や大都市圏の女子よりも求められやすいのかもしれない。