“夫婦もの”BEST3

今回は“レジェンド”作品である『ゲゲゲの女房』を除いて、半澤さんが選ぶ過去10年の朝ドラ“夫婦もの”BEST3を聞いた。

BEST3:男性を主人公に据えて夫婦愛を描いた2作、『エール』と『らんまん』

同率で3位に輝いたのは窪田正孝と二階堂ふみがダブル主演を務めた2020年度前期『エール』と、神木隆之介が主人公でその妻役を浜辺美波が演じた2023年度前期『らんまん』だ。

『エール』のモデルとなったのは、福島市出身で『オリンピック・マーチ』や『長崎の鐘』など数々の名曲を生み出した作曲家の古関裕而とその妻・金子だ。

『エール』は史実に基づき、2人が出会うのは大人になってからでしたが、それぞれの幼少期がしっかり描かれていました。そのため視聴者が2人のファンになった状態を作った上で、出会いから結婚までの流れが描かれていたので、“夫婦もの”としてグッとくるものがありました。

主人公の裕一は朝ドラの主人公らしからぬ内向的なタイプ。苦悩や葛藤するシーンが多かったですが、妻の音さんが本当に優しく寄り添っているのが印象的でした」

同作は2020年の東京オリンピックに合わせて制作されたが、大会自体がコロナ禍で延期となり、作品でも超主要キャストだった志村けんさんが亡くなるという悲劇に見舞われた。

「コロナ禍で放送ギリギリまで撮影をおこなう非常にレアな作品となりましたが、戦争シーンや戦後の日本音楽界も丁寧に描かれていました。コロナ禍もなく、東京オリンピックの時期と同時期に放送されていたら、今よりもっと話題になっていた作品だったと思います」

一方、『らんまん』のモデルになったのは、日本の植物学者・牧野富太郎だ。

「神木隆之介演じる主人公の槙野万太郎が植物のことしか頭にない奇天烈な人間なんですが、そんな彼を社会とつなぎ合わせる役割を浜辺美波演じる妻の寿恵子が担っていました。まずこの2人をキャスティングしたことが大正解と思えるぐらいお似合いなカップルでした。

2作品とも男性を主人公に置き、妻側の視点も丁寧に描いていた。この2作品を通じて夫婦両方の目線を描くことの面白さがヒットの法則として生まれたと言っても過言ではないでしょう」

朝ドラで定番化しつつある“夫婦もの”
朝ドラで定番化しつつある“夫婦もの”