戦時下では“異例”な今作のヒロイン像 

国民的アニメ・絵本『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと、その妻・暢(のぶ)の夫婦をモデルに、戦中戦後と人生の荒波を乗り越える中で、2人が“逆転しない正義”に行き着くまでを描く朝ドラ『あんぱん』。

特に2人の太平洋戦争での経験は、のちのアンパンマン誕生のきっかけでもあり、今作最大の見どころとなっている。そのため、歴代作品と比較し、「尺の長さもヒロイン像も異例尽くしだ」と朝ドラ評論家の半澤則吉さんは語る。

「これまでのヒロインは、『戦争なんて私は嫌だ』という反戦スタイルで、当時の軍国主義や戦時教育下にある婦人会と対立する構図が多く描かれていました。しかし、今作は“正義の逆転”を描くために、ヒロイン・のぶが明確に軍国主義側に洗脳されていく様子が描かれています。

逆に戦争で婚約者の豪ちゃんを失った次女の蘭子と長女ののぶの対立構造は、戦争という観点からみると前半の大きなハイライトでした」(半澤さん、以下同)

さらに、太平洋戦争をメインに扱った作品は多数存在するが、今作では豪ちゃんこと原豪(細田佳央太)が出征する日中戦争も丁寧に描かれており、その長さも異例だ。

「戦時下のシーンは、豪ちゃんに日中戦争の召集令状が届く第27回から、やなせたかしをモデルにした嵩(北村匠海)が太平洋戦争に出征する6週目にまで突入しました。今後もまだまだ続くと思われますので、異例の長尺となるでしょう」

やなせたかしがモデルの柳井嵩がいよいよ太平洋戦争に出征した
やなせたかしがモデルの柳井嵩がいよいよ太平洋戦争に出征した
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