「河北の黒い霧」(集英社文庫・コミック版5巻収録)

東大出身のエリート軍団VS高卒の元暴走族総長

「赤門だよ赤門! 我々の世界では、あそこ以外は大学とは言わんのだ」

『サラリーマン金太郎』第43話では、高級クラブで出身大学を聞かれた「北東総建」の倉本社長が、両脇に女性を抱えながら強烈なセリフを言い放つ。赤門は東京大学の象徴として知られる門で、つまり倉本は「東大以外は大学じゃない」と言っているに等しい。

選民思想が強く感じられる学歴マウントだが、こうした“東大ブランド”が今よりもっと露骨にものを言っていた時代の空気も感じさせる。

実際、いまでも官僚の世界では東大の強さは目立つ。人事院が公表した2024年度春の国家公務員総合職試験では、出身大学別合格者数のトップは東京大学の189人。2位は京都大学120人、3位は立命館大学84人で、東大が存在感を示している。

もっとも、合格者全体1953人のうち189人なので、割合で見れば約1割。昔の“東大一強”のイメージほどではなくなっているのもまた事実だ。

だからこそ、倉本のこの一言はただ偉そうなだけでは終わらない。学歴そのものを“自分が上に立つための道具”として振り回す男だと、一瞬で分かるのだ。

さらに倉本の取り巻きたちは「業者の分際で“官”に逆らったらどうなるか、世間に見せつけるいい機会だな」とヤマト建設に敵意を燃やす。北東総建そのものもまた、天下りで固められた権力の側として、民間企業を見下している“マウント気質”と選民思想があるのだ。

そしてもちろん、その北東総建と真正面からぶつかるヤマト建設の先陣に立つのが、高卒の元暴走族総長・矢島金太郎だ。東大ブランドを振りかざす権力側と、学歴とは無縁の現場叩き上げ。

金太郎とヤマト建設はこの巨大な組織にどう挑んでいくのか。学歴マウントから始まって、やがてもっと大きな戦いの匂いまで漂ってくる第43話である。