「金太郎、営業する。」(集英社文庫・コミック版4巻収録)

金太郎をバカにする社員と評価する副支社長

「天下とる人間とバカヤローは紙一重」――。

『サラリーマン金太郎』第40話は、この伊郷副支社長の一言がすべてを表している回だ。

東北支社に赴任した金太郎は、河北市役所での営業を任される。まずは役所に通い、顔を覚えてもらうことが第一歩。地味で泥臭い仕事だが、公共工事の世界では、こうした積み重ねが受注の入口になる。

その結果、金太郎はついに市民ホール増改築工事の見積もりを頼まれる。役所の積算を手伝うということは、その工事の「本命」に近づくということ。ヤマト建設にとっては、河北市での久々のチャンスだった。

だが、社内の空気は冷ややかだ。

河北市では北東総合建設が強い力を持ち、ヤマト建設は長らく仕事から締め出されてきた。下手に動けば相手を刺激しかねない。だから支社の社員たちは、金太郎の動きを「無駄仕事だ」「何も知らねえただのバカだからだ」と切り捨てる。

だが伊郷の評価は違っていた。自分の言いつけを正直に守り、仕事を取ってきた金太郎を、「天下とる人間とバカヤローは紙一重って事よ」と評する。

確かに、新しいことをやる人間は、最初から「すごい人」には見えないことが多い。たとえばライト兄弟も、最初は懐疑的な目で見られ続けた。革新的な挑戦ほど、「無理だ」「大げさだ」と扱われやすいのかもしれない。

会社の中では、空気を読み、前例を守り、波風を立てない人間のほうが“賢い”とされやすい。だが一方で、周囲に馬鹿だと思われるような無鉄砲さがなければ、何も変わらないのもまた事実だ。

最悪の出会いをした金太郎と伊郷の関係が、少しずつ変わり始める。会社が本当に確保するべき人材とはどんな人間なのか。第40話は、そんなことを考えさせる一編でもある。