「金太郎、入札する。」(集英社文庫・コミック版5巻収録)
ついに打ち破られた談合
ついに「北東総建」と「ヤマト建設」の戦いの火ぶたが切って落とされた。河北市の市民ホール増改築工事の入札をめぐり、談合がはびこっていた河北市において、ヤマト建設が正々堂々の勝負をしかけたのだ。
『サラリーマン金太郎』第44話では、ヤマト建設の金太郎が北東総建に啖呵を切ったことをきっかけに、ほかの業者たちも談合の殻を破って勝負に出る。
各会社の入札額が発表されていくと、場内では歓声があがる。「本気で落としに来ている」と。
これまでの河北市では、入札は表向きこそ公平な競争でも、実際には事前に“本命”が決まっている空気が当たり前だった。だからこそ今回のように、各社が本気の数字をぶつけ合う光景は、それだけで異様なのである。
業者たちは「久しぶりのタマの打ち合い」とざわつく。談合が崩れただけで、入札会場はここまでピリつく。
しかも面白いのは、ヤマト建設だけでなく、ほかの業者までもがこの流れに便乗して勝負に出てくるところだ。長く続いた北東総建の独裁に、みな内心ではうんざりしていたのかもしれない。ヤマト建設の一撃が、止まっていた空気を動かしたのだ。
一方で、この空気の中で一人、冷静なのが副支社長の伊郷である。周囲が真剣勝負の空気に沸くなか、伊郷だけは「勝てねえ。絶対勝てねえ」と言い切る。せっかく談合が崩れ、本当の勝負が始まったはずなのに、まだ何かがおかしい。金太郎の熱さとは対照的に、伊郷はすでにこの入札の“異変”を見抜いているのだ。
正々堂々の戦いが始まったかに見えて、なお漂う不穏な気配。談合の殻を破った先に、ヤマト建設は本当に勝機を見いだせるのか。























