「金太郎、孤立する。」(集英社文庫・コミック版4巻収録)

「サラリーマンは野球」その意味は?

「サラリーマンは野球だ」

『サラリーマン金太郎』第42話は、この言葉がすべてを持っていく回である。

前話で金太郎は、河北市の公共工事をめぐる談合めいた空気に真正面からケンカを売った。だが42話で描かれるのは、その先だ。正論を吐くだけでは仕事は動かない。どれだけ熱くても、一人では会社の勝負には勝てない。そこで出てくるのが、「サラリーマンは野球だ」という言葉なのである。

作中でヤマト建設社員の岡本は、ゴルフより野球が好きな理由をこう語る。ゴルフはいいスコアを出しても喜びは自分一人だが、野球で勝てば9人分うれしい、と。

たしかに、会社員の仕事も自分一人の手柄だけで完結するものは意外と少ない。営業が仕事を取ってきても、現場が動かなければ進まないし、上が腹をくくらなければ勝負にもならない。そう考えると、「サラリーマンは野球だ」という言葉はかなりしっくりくる。

実際、仕事の場では野球っぽい言い回しが案外多い。「全員野球」で総力戦を表したり、「直球」「変化球」で提案や伝え方の違いを言い分けたり、「代打」で急きょ別の人が出ることを表現したりする。

会社でいちばん頼れる人を「エースで四番」と呼ぶこともある。役割が分かれていて、ここぞという場面で誰かに打順が回ってくる感じは、組織の仕事と重ねやすいのだろう。

この42話で金太郎は、「一人で試合をやろうとしてる」とはっきり言われ、自分の間違いに気づく。これまでの金太郎は、良くも悪くも自分一人の勢いで突っ走ってきた。だが今回は、勝つためには仲間を巻き込み、会社をチームにしなければならないと知る。

そこからの流れが熱い。同僚たちに頭を下げ、助けを求め、その思いに設計も積算も幹部も動かされていく。まさに“全員野球”である。

そして最後には、同僚たちが金太郎を先頭に立て、北東総建との勝負へと踏み出していく。金太郎は会社の切り込み隊長、一番バッターになれるのか。続きは42話で。