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#7からのつづき

司法試験に合格するよりも、漫画に載るほうが価値がある

――『「子供を殺してください」という親たち』の最新14巻では、「たくらみのある子育て」で押川さんのアシスタントである実吉の過去のトラブルが明らかになりました。

「押川さんはこういうこともやってるんだ」、「助けてくれるんだ」と言ってる人がいて、困ったなと思いました。無理ですからね(笑)

実際には、実吉はもっと複雑なバックボーンを持っていて、描けないことがたくさんあったんです。まあ、その中でも、13巻にでてくる『「いい子」の仮面の犯罪者』の薬物に手を出す女の子と対照的だけど本質は同じだ、と言われたことが印象に残っていますね。

「なんだよっ」「うるっせーんだよ」「だからなんだってんだよ」…3語しか話せなくなった脳梅毒の男を医療につなげるための「本質的な」関わり方_1
『「子供を殺してください」という親たち』「たくらみのある子育て」より
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――実吉にもモデルがいるんですよね。

はい。ざっくりいうと、田舎の権力者家族に縛られてるタイプですね。ただ、理解力はあるから、自分の家のことに関しても、一つ理解していくと切り替えが早いんですよ。物覚えもめちゃくちゃよくて、宅建とか行政書士とかの試験なら、参考書1回読むだけで取ってくる。「お前、司法試験いけるんじゃないの?」って言ったら、参考書をパラっとめくって「3年あれば」って言うような人間です(笑)。

ただ、ライセンスを表に出して生きていくのではなく、人間の根源の部分で助けるというか、声を聞いたり、介入していくことができる人間になれよということで、うちでは育てています。なので、漫画に描いた内容は実際の10分の1程度ですけど、読者、特に高学歴の女性はすごく共感をしたという声が多かったですね。で、一般の方は『「いい子」の仮面の犯罪者』の薬物の女の子にすごく共感したと言っています。

「なんだよっ」「うるっせーんだよ」「だからなんだってんだよ」…3語しか話せなくなった脳梅毒の男を医療につなげるための「本質的な」関わり方_2
『「子供を殺してください」という親たち』「たくらみのある子育て」より

――本人は漫画に描かれたことについて、どう言ってますか?

すごく喜んでます。この漫画の怖いところは、モデルになった人から感謝されるんですよ(笑)。ちょっとやばいことも書いてるのに、「本当にありがとうございます」って。それぐらい、親や兄弟から子供のときに相手されてないいから、自己肯定感が低い。だって、兄弟から性的虐待を受けてたなんて、普通は嫌な話じゃないすか。

「なんだよっ」「うるっせーんだよ」「だからなんだってんだよ」…3語しか話せなくなった脳梅毒の男を医療につなげるための「本質的な」関わり方_3
『「子供を殺してください」という親たち』「たくらみのある子育て」より

だけど、プロットも、ネームも、原稿が出来上がってからも、自らチェック入れるんですよ。こっちが出せないと思ってるエピソードも「この話、出したほうがいいんじゃないんですか?」って。だから自分自身にとっての表現みたいなものなのかもしれませんね。

きっと彼女にとっては、司法試験に合格するよりも、この漫画に載ったことのほうが価値があるんだと思います。