思い出の出所メシは「ロールケーキ」

誰がいつ、どこの刑務所を出所するのか、誰が迎えに来るのか。それを知るのは親族や友人、ヤクザなら所属する組ぐらいだ。

カタギであれば出所間近の受刑者を親族や友人から紹介してもらい、出所前にコンタクトを取っておいて、出所してきたところで正式に取材許可をもらうこともできるだろう。

だが、ヤクザとなればそうはいかない。組の者が車で刑務所の前まで迎えに来て、そのまま組事務所に挨拶に向かうからだ。

出所したとき、最初に食べたいと思ったものは何か。これまで数回服役したという暴力団の古参幹部にそう尋ねた。答えは「ロールケーキ、とにかくロールケーキが食べたかった」。

かつ丼や天丼、ラーメンやステーキかと思ったが、想像とは違う予想外の答えに面食らった。
刑務所に入ると、とにかく甘いものが無性に食べたくなるという話はよく聞くが、この幹部もそうだった。

(写真はイメージ)
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車で迎えに来た当時所属していた組の者に、「とにかくロールケーキみたいなものが食べたかったので、途中でコンビニに寄ってもらった。これくらいのを買って丸かじりした」。

幹部が手で示したサイズは20センチ程度、コンビニやスーパーで昔から売られているなじみのロールケーキで、安くておいしいというから、きっとヤマザキのロールケーキだろう。

「丸かじりした最初の一口なんて、そりゃうまかった」と思い出して頬を緩めるが、「動くものに慣れてなくて。途中で車を停めてくれといって、全部吐いた。えらい目にあった」と幹部は話す。

刑務所での数年間は車に乗ることがなかったので、身体が揺られる感覚に車酔いしたのだ。

それでも「あのときのロールケーキはうまかった」としみじみと話すから、幹部にとって思い出に残る出所メシなのだろう。普通の食事は組事務所についてからで、親分が用意してくれた料理を食べたという。