指を落とすのは輪ゴムで縛って感覚がなくなってから

この事件が話題になったのは、逮捕されたヤクザが大物だったこともある。野内容疑者といえば、弘道会では若頭という地位にいる幹部。

その幹部が昨年2月に自ら指を切断したにもかかわらず、過失による負傷と偽って詐欺行為を行なった。国民健康保険で支払いを免れた金額は4万5千円。

山口組関係者はこのニュースにあっさりと「仕方ない」と答えた。

「あれは誰が見ても偽証。指詰めは自傷行為。保険適用されないことぐらい、ヤクザなら知っていて当たり前。治療をした医者も、見るからにヤクザらしい男が切断した指を見せてきたら、『どうしましたか?』『なんで切りましたか?』なんてわざわざ詳しく理由は聞いたりしない。『事故です』と言われれば、『そうですか』としか答えようがなかっただろう」

今でも暴力団の間では「指詰め」が行なわれている。数が減っているとはいえ、ヤクザにとっては不始末に対してケジメをつけ、失敗をリセットするための方法である。

(写真はイメージ)
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指定暴力団の古参幹部A氏はこう話す。

「小指がなければすぐにヤクザだとわかる。今はヤクザに厳しい時代。ヤクザとなれば仕事がやりにくい。昔のようにヤクザがステータスで幅を利かせられるわけではない。
シノギのために組員を組から脱退させるような時代だ。下手に子分の指を取るより、ケジメを取らせる方法はいくらでもある」

A氏は2度、頼まれて他の者の指を落としたことがあるという。

「指詰めは自分でやるより、やってもらったほうがいい。落とす指に刃物をあてがっても、イザとなれば怯むものだ。ここから落とすと定めても刃物を持つ手が震えて、斜めに切ったり、切り損ねたりしやすい」

用意するのはノミとまな板、小づちか金づち、それに輪ゴム。消毒液にタオルや包帯も用意する。極道映画の指詰めシーンでは、その場で躊躇なく小指を机の上に置き、持っていたドスや包丁で一気にすっぱりと切っているが、その手法だと痛いし出血も激しいという。

「まず落とす指の根元を輪ゴムでぐるぐるとしっかり縛る。3分もすれば、血が溜まって固まり、指先がうっ血して紫色に変色する。そのうち冷たくなってきて感覚がなくなる。落とすのは感覚がなくなってから。
まな板の上に指を置き、落とす場所を決めてノミをあてがい、小づちか金づちをそこに一気に振り落とす」(A氏)