無能力者のための憲法9条

さて、日本国憲法は第9条によって、(率直に読めば)我々に戦力の保持を禁じている。前者「戦争に負けてよかった」の立場から見れば、憲法前文にはいささかの違和感もないだろう。

〈日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した〉【2】

占領軍が「悪い日本人」を処罰・処刑し、自分たちのような(前者の)「善き日本人」を守ってくれた。そして、まだ愚かな日本人たちを教育し、諭し、導いてくれたと信じるなら、正義はいつでも「日本以外の諸外国」に在る。戦力を放棄して無能力者になることで、ご立派な外国人たちに「守っていただく」というのが、「非武装平和」の基本的な考え方である。

警察予備隊から始まる自衛隊の歴史は明らかに「非武装平和」と隔絶しているが、マスコミや日弁連、アカデミア、公教育界の関係者たちが棲む上っ面の世界では、長らく「非武装平和」が存在し得るものと主張されてきた。

そんな中、「戦争に負けてよかった」という立場を堅持しながら、非武装中立のまやかしを自覚し、妄想的平和論愛好家たちの中で孤軍奮闘してきた存在が木村晋介である。

写真/shutterstock
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