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防衛大学校のおかしな仕組み

等松春夫教授のインタビューと論考「危機に瀕する防衛大の教育」を一気に読んでしまった。

それから、ゾッとした。まず思ったのは、とにかく記者会見を開いてもらいたいということ。あまりにも衝撃的な内容だったので、うかがいたいことがたくさんある。他の大手メディアの記者も同じように感じているのではないだろうか。

東京新聞の望月衣塑子記者 写真/野辺竜馬
東京新聞の望月衣塑子記者 写真/野辺竜馬
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一般的に、防衛大学校といえば幹部自衛官の入口であり、将来的には自衛隊の中枢を支えることになる人材を育成するための大学(に相当する機関)と、イメージされている。私自身もそうだった。

ところが、等松教授によれば、防大における学究カリキュラムの最大の特徴でもある「防衛学」を教えている教官のほとんどは、現役の自衛官が「自衛官としての階級」を「研究者としての立場」にスライドさせておこなわれているというのである。

自衛隊で1佐以上の階級なら「教授」、2佐・3佐なら「准教授」。

これは、どう考えてもおかしな仕組みだ。どれぐらいおかしいのかは、立場を逆にすればわかる。たとえば、今回の告発者である等松春夫さんは政治外交史の専門家で、防衛大学校・国際関係学科の教授だ。よって、仮にこの立場を自衛隊にスライドした場合、等松さんは1佐(諸外国の軍隊における大佐)の階級を与えられることになる。

そんな馬鹿な! 

「人権侵害常習犯の差別主義者」という批判が「公正な論評」と裁判で認定されてしまった【1】作家の竹田恒泰氏を、幹部候補生向けの講演者として呼ぶような自衛官教官であっても、もし、そんな決定が下されれば激怒するのではないか。

小銃を担いだことも、撃ったこともない、匍匐前進も知らない教授が、なぜ1佐として部隊を指揮する立場を得られるのか。できるはずがないだろう。

自衛官教官の補職は、その「できるはずがないもの」と構造は同じなのだ。等松教授が「1佐」として部隊を指揮できないのと同様に、1佐の武官の皆さんも、ルーティンの人事でいきなり大学にやってきて、なおかつ「教授」として学生たちに質の高い講義をおこなうことなどできないはず。等松教授の論考で書かれているのは怒りというより、教育者としての絶望だろう。