(前編)

「死にたい」衝動にかられる

小川さんは自分のことを「繊細で臆病」だと言うが、もう一つ付け加えるとしたら、とても真面目だ。

小川さんが『ひきこもり新聞』に書いた「当時者の声」が話題になり、あちこちの当事者会やひきこもりの居場所で取り上げられるようになると、「書いた本人として行かないわけにはいかない」と律儀に足を運んだ。ひきこもりの家族会から新たな原稿を頼まれると、頑張って書き上げた。

だが、そうして動けば動くほど、ある思いにとらわれるようになる。

「ひきこもって動けない状態のときは壁がただ見えているだけでしたが、動こうとすると自分のできないことが、より解像度高く迫って見えてきたんです。それでも動き続けたら、今度はその壁に当たって砕けちゃったという感じです。

単純に言うと、いろいろ動いて疲れちゃったんですね。最初につながった当事者とのいざこざもあったりして、そこからどういう風に動いていくべきなのかわからなくなった。

ひきこもりとして言いたいこともいろいろ書かせてもらったし、もうこれ以上は自分ができることはないなって、あきらめてしまって。それで、もう『自死するしかない』と思ったんです」