焼肉店への支出額がコロナ禍前より1000円アップ
ファミリー向け、ロードサイド型の焼肉店は典型的な「ハレの日」需要の受け皿だ。子どもの誕生日、テストや部活でいい結果が得られたお祝い、家族が集まる日など、イベントで使われることが多い、非日常型の業態である。下のグラフはインターネットの検索需要を調査するツール「Googleトレンド」で、過去30日の焼肉きんぐを調べた結果だ。
土曜日と日曜日に検索が集中している。家族が顔をそろえやすい週末に客が集中するのだ。焼肉きんぐは平日のランチ営業も行なっているが、稼ぎの中心は土日となる。
日常型の業態に牛丼やラーメン、カレー、そば。非日常型に焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶ、寿司などがある。日常型と非日常型で決定的に異なるものが、顧客の店に対する期待値の高さだ。
日常型の店舗はコストパフォーマンスに優れていることが重要だ。顧客は安く、そこそこの味の料理が手早く食べられれば十分だと考える。しかし、非日常型店舗での食事はエンターテインメントの要素が高く、特に食事の満足度がものをいう。高く設定されている顧客の期待値を、さらに上回るサービスを提供することがリピーターを創出するポイントなのだ。価格を下げることだけが集客フックにはなりえない。
その傾向は、コロナ禍を経て強まった。総務省の家計調査によると、2023年の焼肉への年間支出額は7984円。2019年は7004円だった。1000円近くも上昇しているのである。
コロナ禍で消費者の外食頻度は減っている。その代わり、1回当たりの支出額は増えており、贅沢をしたいという意識が高まっているのは明らかだ。日常型のファミリーレストランでさえ1回当たりの支出額は増えている。
ハレの日需要を獲得する焼肉店は、これまで以上に消費者の期待値が高まっていると考えるべきだろう。経営の難易度が上がっているのだ。