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“我慢と怒り”に気付いて夫と大喧嘩

母親である野中さんの気質を受け継いだのか、子どもは2人とも繊細だった。下の息子は特に敏感で、出産直後から大きな声で泣いて眠らず、産婦人科の先生に「怒りんぼちゃん」と言われたほど。

退院してからも、ずっと抱っこして縦に揺れていないと泣くので、ろくに休めなかったが、1人で懸命に子育てをした。もともと自分に自信がない野中さんは「役に立たないと存在してはいけない」という思い込みがあったからだ。

娘が小1、息子が幼稚園の年少のときに、親戚の女性と子どもがしばらく滞在することになる。女性はしきりに自分の夫への不満を口にした。

写真はイメージです
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食べた食器はそのままで洗わない。洋服は脱いだら脱ぎっぱなし。頼めば子どもと遊んでくれるけど不満げにやる……。

「うちの夫の親族は皆、母親なんだから何でもやるのが当たり前だろうという感覚だったし、私の育った家庭もそうでした。だから、私も仕事をしている夫に感謝こそすれ手伝ってと言ったことはなかったんです。でも、彼女の話を聞いているうちに、私だって夫にしてほしいことがある、ずっと我慢していたんだと気付いちゃったんですね。それでちょっと夫に不満めいたことを言ったら、『やばい、こんな人だったっけ』ってくらいに、めっちゃ怒り出して。私も彼への怒りが止まらなくなって、大喧嘩になったんです。
 

私はそれまで怒りを出したことがないから、ずっと押し込めてきた本音を言うぞと思ったら爆発して。激高じゃないけど、おかしい状態に見えたんだと思う。私は思っていることを口にしてるだけなのに、また病院に行けとまで言われて……。

要は、旦那としては、いつも機嫌よく何でもしてくれる妻が家にいないのは困るから、一刻も早く病院に入れて、もとの私に戻ってほしかったのでしょう。結局、だまし討ちみたいにして精神科病院に連れて行かれたんです」