(後編)

教師にも〝いない者〟扱いされて、不登校に

茨城県に住む高梨正志さん(仮名=39)は、断続的に6年ほど家にひきこもった経験がある。最初は高校2年生のときだ。

真面目でおとなしそうな雰囲気の高梨さん。誰も知り合いのいない遠方の高校に進学すると友達が全くできなかった。それでも1年生のときは担任教師が気にかけてくれたので、どうにか登校できていた。

「熱血教師だったんです。『お前、友達いないのか、じゃあ俺とキャッチボールしよう』みたいな。それが、2年生になると担任が変わって、『学校に来られないヤツは来なくていい』という感じで。先生からも〝いない者〟扱いされるし、居心地が悪すぎて、もう行けなくなっちゃって……」

「学校に来られないヤツは来なくていい」担任から“いない者”扱いされ不登校…就職でもつまずき、ひきこもりに。親に「働かないなら家から出ていけ!」と言われ、遂に…_1
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追い打ちをかけたのはクラスメートの心無い言葉だ。

「幽霊が来た!」

高梨さんが久しぶりに登校すると、そう言ってからかわれた。20年以上経った今でも、その男子の名前を憶えているほど傷ついたという。そのまま家に帰りたくなったがグッと我慢した。

「あと1日休んだら留年という状況だったので。留年して、もう1年通うことと天秤にかけて、我慢する方を選びました」

両親には当初、「学校に行け」と言われたが、だんだん放っておかれるようになった。3歳下の妹も不登校で、親と激しい喧嘩をくり返しており、そちらに手を取られていたのだという。高梨さんは自分の部屋で読書をしたり、プレイステーションでゲームをしたり。「ファイナルファンタジー直撃の世代なので」と控えめに笑う。

大学受験はしたが、全滅だった。高校2、3年の間、あまり学校に行かなかったので仕方ない。「1年間、浪人という名のひきこもりをして」千葉県の大学に入学した。

「環境が新しくなったので、大学は割と普通に通えましたね。1年目に海外研修があって、そこで仲よくなった人たちと4年間一緒にいました」