〈前編〉

人を殺さないためにひきこもった

瀧本裕喜さん(44)が、ひきこもりから脱する初めの一歩は、わずかな生活音の変化に気づいたことだ。

瀧本さんがひきこもって以来、1人息子を刺激しないよう両親は静かに玄関を出入りしていたのだが、玄関の扉を開け閉めする音が、ひきこもって5年過ぎた頃から大きくなったのだという。

「ひきこもっている間は、聴覚がすごく鋭敏になったんです。名探偵コナン君の推理じゃないけれども、生活音が変わるのは、何かしら心境の変化があったはず。