平成以降のヒーロー

アンパンマンを日本の赤ちゃんや幼児=乳幼児がどれだけ好きか。

小児病院、保育園、幼稚園、託児所に行けば、すぐにわかります。病院で大泣きしていた子が、アンパンマンの顔を見た瞬間、ぴたりと泣き止む。そのすきに、看護師さんがサッと注射を打つ。お医者さん、保育士さんなど乳幼児を扱うプロの方たちの多くが話します。

「アンパンマンにはいつも助けられています!」

いやいや、もっとお世話になっているのは私たち! 育児真っ最中の親御さんの多くがそう言います。アンパンマンは日本の子育てに必須。乳幼児のいる家庭や乳幼児を扱う病院、保育園、幼稚園や各種小売業の世界では、もはや「常識中の常識」です。

一方、50代以上の男性の大半は、アンパンマンがここまで圧倒的に乳幼児に人気があることを案外知りません。理由は2つあります。

1つは、アンパンマンは平成以降のヒーローだからです。圧倒的に人気を集めるようになったのはアニメ放送が始まった1980年代終わりからで、国民的な存在になったのは21世紀になってから。このため、昭和の時代に子どもだった50代以上の世代はアンパンマンの圧倒的な人気ぶりを自分で体験していません。

現代では乳幼児で知らない子はいないアンパンマン
現代では乳幼児で知らない子はいないアンパンマン
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もう1つは、50代以上の日本の男性の多くが、我が子の乳幼児時代の子育てに積極参加していなかったからです。そのため、アンパンマンが乳幼児にいかに愛されているか、子育ての現場でアンパンマンがいかに役立つか、実体験のある人が少ない。

昭和日本は、「働く夫と専業主婦」家庭が主流でした。厚生労働省のデータによれば、1980年の専業主婦世帯は1114万世帯、共働き世帯614万世帯️ですから専業主婦世帯が約2倍です。43年後の2023年になると、専業主婦世帯は517万世帯、共働き世帯は1278万世帯ですから共働きが約2・5倍。完全に逆転しています。

1985年の男女雇用機会均等法の制定、92年の育児休業法の施行などで共働きの流れが始まりますが、男女の育児休業取得率にはずっと大きな開きがありました。女性の取得率は2007年以降80〜90%なのに対し、男性は16年まで3%を超えたことは一度もなかったのです。