ヒグマは臆病な生き物、自治体は共存を目指すが…
ヒグマは臆病な生き物なので、へたに刺激しなければ人間を積極的に攻撃してくることはほぼないという。とはいえ、前述したとおり、ヒグマが人を襲った事例もあるため、安全を守るために仕方なく駆除しているのだ。
「クマ駆除はやむなし」というコンセンサスは、道民全体で当たり前になっているという。クマへの強い意識と知識を持っている道民からすれば、「クマがかわいそう」と訴える道民以外の人々の意見は、悲しく複雑な心境になるそうだ。
結果として駆除せざるをえないケースはあるが、自治体も好きこのんでヒグマを駆除しているワケではない。北海道では、出没したクマの特徴や場所をもとに有害性を段階的に判断し、捕獲するか駆除するかを決定しているのだ。たとえ市街地に現れたクマでも駆除しないことがあるのは、知っておいてもらいたい事実である。
そして札幌市では、「人は街で、ヒグマは森で。~すみ分けによる安全・安心な暮らしを目指して~」というビジョンを掲げている。ヒグマの生息域と人の生活圏を分けようと対策を練り、共存を目指そうとしているのだ。
クマの被害規模が大きいこと、そして、むやみやたらに殺しているワケではないこと。せめてこの事実を知ってもらうだけで、“駆除は悪である”という見方は変わってくるのではないだろうか。クマに関する正しい知識を身につけることで、クマ出没地域へのヘイトがつのらないことを願うばかりだ。
取材・文/文月/A4studio