クマから「見るのはいいけどこっちに手は出すなよ」という圧が……

道東に位置し、世界自然遺産に登録された知床半島は、高い密度でヒグマが生息している地域だ。ヒグマを観察できる観光船でのツアーが人気で、ヒグマ見たさにたくさんの観光客が足を運ぶ。

環境保全のため、一部エリアは立入禁止になっているが、一般車両でも通行できるところも存在する。したがって、至近距離でヒグマと遭遇する可能性もあるのだ。

北海道札幌市在住でドライブが趣味というCさん(20代男性)は、今年7月に知床でヒグマと遭遇したという。

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「森に囲まれた道路を車で進んでいると、突然前を走っていた車両数台が止まってしまって。で、対向車線側の路肩を見てみると、ヒグマがいたんです。体長は1.8~2.0mで、ずんぐりと身体も肥えていてデカい。クマまでたった20mぐらいと至近距離だったので、さすがにびっくりしました。クマは動くものを追う習性があるので、動くに動けなかったです。

20mぐらいの距離にいる体長1.8~2mのヒグマ。なおCさんは、車の窓を閉めドアロックをした上でヒグマを撮影している
20mぐらいの距離にいる体長1.8~2mのヒグマ。なおCさんは、車の窓を閉めドアロックをした上でヒグマを撮影している
ちらっとCさん側を向く
ちらっとCさん側を向く

クマのほうはこちらに怯えた様子はなく、しばらく見つめてきた後、茂みの中に帰っていきましたね。おそらくですが、知床は観光客も多くてクマも人慣れしているでしょうから、パニックにならなかったんだと思います。何もされなくてひと安心でしたが、ヒグマのほうから『見るのはいいけどこっちに手は出すなよ』という圧は感じましたね」

特に緊張している様子はなく、リラックスしていた
特に緊張している様子はなく、リラックスしていた
最後は茂みに入り、消えていった
最後は茂みに入り、消えていった

Cさん提供の動画では、特に人間を気にしておらず、リラックスしているような様子がうかがえる。知床半島付近では観光客も多いので、クマにとってそれだけ人間が身近な存在になっているのだろう。

しかし一方、道南の日高町に住んでいた公務員のDさん(50代男性)が遭遇したヒグマは、また様子が異なっていたそうだ。

「仕事で登山した際、登山道の途中で子どものヒグマに遭遇したのですが、こちらを見るなり、慌てて逃げていきました。日高町もクマの目撃は多く、私自身も3、4回ほど見かけましたが、そのほとんどが人慣れしていません。

町東部には北海道を二分する日高山脈がそびえたっており、クマもほとんどそこに生息しています。もともとヒグマは臆病な動物なので、人と遭遇する機会が少ない個体であれば、ビビッて森の中に戻ってしまうんですよ。

余談ですが、子グマの近くには、必ず母グマがいると言われています。なので、自分とクマの距離が少しでもズレていれば、どうなっていたかはわかりません……」