駆除当初、「OSO18」だとは思わなかった

これまでに「OSO18」が目撃された地域は北海道東部の標茶町とその南東部に位置する厚岸町の2地域だった。「OSO18」とは最初に目撃された標茶町の町内「オソツベツ」という地名と、前足の幅が「18センチ」だったことから名づけられたコードネームだ。

これまで雄ヒグマが滅多に狙わなかった乳牛を獲物にしていること、朝夕待ち伏せるハンターの目をかいくぐる用心深さから、脅威の存在とされていた。

標茶長役場で姿が確認された「OSO18」(提供:標茶町役場農林課林政係)
標茶長役場で姿が確認された「OSO18」(提供:標茶町役場農林課林政係)
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そんな「OSO18」を捕獲したのは猟友会のハンターではなく、釧路役場の有害鳥獣駆除対応を担当する部署に所属する40代の男性職員だった。役場に勤務しながら鉄砲撃ちとしての顔も持つ珍しい役人ハンターだが、釧路役場に取材の旨を伝えると「男性職員への直接取材は避けていただきたい」とのこと。

それには深い理由があり後述するが、とりあえずは捕獲時の様子を釧路役場の農林水産課の林務係に話を聞いた。

「捕獲された2日前の7月28日、釧路町に2軒ある酪農家のうちの1軒からクマの目撃情報がありました。
私ら役人と酪農家は顔見知りなので、職員が『んなら、見とくわ〜』という感じで29日と30日にパトロールすることとなり、30日の朝5時ごろ、釧路町仙鳳趾村オタクパウシの牧草地で横たわっているところを発見したようです。
職員を見ても逃げなかったらしく、まず首に1発、近づくと動いたために頭部に2発撃つと、まもなく絶命しました」

絶命した「OSO18」(提供:北海道釧路総合振興局保健環境部環境生活)
絶命した「OSO18」(提供:北海道釧路総合振興局保健環境部環境生活)

捕獲当初、このクマが「OSO18」だとは思わなかったという。そのため、軽四駆のジムニーに積んだが、そのままの走行は無理と考え、処理業者が持つ荷台のある車両に積み替えて運び、解体したという。
前出の釧路町役場の林務係担当者は言う。

「体長は尻尾から頭まで2メートル10センチで、体重は330キロ、手の平は20センチとかなり大型でした。
すでに解体済みで毛だけしか残っていませんでしたが、念のために鑑定することとなり、8月10日に道立総合研究機構に体毛のDNA鑑定を依頼しました。

その結果が8月18日の遅い時間にメールで届いていたのですが、すでに職員は退勤。その日は金曜日だったので、週明け8月21日の朝に発覚 し、すぐに標茶町役場に連絡を入れました」