これまでに15件の障がい児の養子縁組を成立

「障がいを持った子どもを受け入れられない。そんなお母さんは一定数いますね」

漫画『コウノドリ』への取材協力の経験もあるNICU(新生児集中治療室)勤務の新生児科医、今西洋介氏はそう話す。

厚労省によると、先端医療によって生命が維持される在宅“医療的ケア児”の数は2005年の約1万人から2019年には約2万人へと倍増している。医療が発展し、救われる命が多くなった一方、障がいを持つ子どもの数も増加したことがもうひとつの問題を引き起こしている。

「自分の子どもが障がい児だという現実を受け入れられるまでの期間は、親御さんでそれぞれ違いますが。やはりなんやかんやでみなさん、自分の手元で育てられる。でも少数ですが、受け入れられない親御さんもいます」(今西氏)

医療的ケア児である恵満ちゃん
医療的ケア児である恵満ちゃん
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日本で唯一、障がい児の養子縁組を斡旋するNPO法人みぎわの理事、松原宏樹さんはそういった親御さんの心の声に耳を傾けてきた。みぎわの活動については前編で紹介した。

みぎわには、年間約50件の相談が寄せられる。そして、これまでに約15件の養子縁組を成立させてきた。

松原さん自身も4年前にダウン症で心疾患の大手術を受けた大和くんを養子縁組で引き取り、その後、染色体異常の医療的ケア児の恵満(えま)ちゃんも松原家にやってきた。恵満ちゃんは寝たきりで、経口摂取ができず、胃ろう(胃へと直接食べ物を流し込むチューブ)から栄養を摂っている。

「親御さんにとっては待望のお子さんだった恵満ちゃんですが、産まれてから障がいがあることがわかりました。
それでも産まれてからしばらくは親御さんは病院に来ていたようですが、しばらくしたら来なくなって、医療費も払われなくなりました。

僕が初めて会ったのは、恵満ちゃんが1歳半のころ。サイズが合わない服を着せられていたので、服を買って持っていったんですよね。
両親が来なくなって、恵満ちゃんがNICUの一番奥に“物”のように置かれていたのが忘れられません」