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少年院で「薬漬け」に…

コロナ禍の202年の真夏の8月、福岡市内のショッピングモール「マークイズ福岡ももち」で、15歳の少年による無差別殺人が起きた。

事件の2日前まで、加害者の少年は少年院に収容されていた。彼はそこを出てから一度は更生保護施設に入ったものの、翌日に脱走。その後、福岡市内をさまよう中で、21歳の女性に目をつけ、女子トイレに押し入って性行為を求める。だが、女性から断られたことに腹を立て、包丁で刺殺したのである。

この少年は小学生の頃に発達障害があると診断され、小学校中学年の頃から精神病院、児童自立支援施設、医療少年院など複数の施設をたらい回しにされていた。だが、家庭環境の劣悪さと障害が合わさり、それらの施設で暴力的なトラブルをくり返した。そのため、少年院にいた頃には医者から精神を落ち着かせるための薬を処方され、「薬漬け」の状態になっていた。

給食中にクラスメイトをフォークで刺した加害者―薬をうまくコントロールできない発達障害の子供たち_1
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後に少年は、拘置所で私と面会した際、次のように語った。

「少年院とかで薬を飲んでいる時は24時間ボーとしているだけでした。食欲もわかないし、なんか自分が生きているかどうかもよくわからない感じです。それで少年院を出ることになった途端、いきなり薬を止めさせられ、今度はぜんぜん違う人間になったみたいにグチャグチャになりました」

一般的に少年院を出た後に薬の継続的な服用が期待できない場合は、在院中に薬を抜いた状態に慣れさせる場合もある。だが、出院の直前にいきなり薬を止めれば、それまで薬で抑えていたものが噴き出し、異常な精神状態になるケースも見られる。彼の場合が、まさにそうだったのだろう。

そして彼は「グチャグチャ」のまま白昼の凶行に至ったのである。

発達障害の少年たちの非行問題を取材していると、医者から処方された薬をうまくコントロールできていない人に出会うことが少なくない。

家庭、学校、学童、習い事、地域行事などにおいて、現代の子供たちは昔以上に「規律」に従うことが求められている。教員が学級崩壊を防ごうと管理教育を強めたり、親が子供にGPSを持たせるなどして行動を監視したりしているのがそのあらわれだ。