日本で唯一、障がい児の養子縁組斡旋を行うNPO法人

「(子どもの)手術に同意したくありません。なぜなら、長生きをしてしまうから」

そう話す母親に、「私が引き受けますから、安心して手術に同意してください」と、諭すように応えたのは、牧師の松原宏樹さんだ。

電話ごしに「よかった」とその母親の安堵にも似た声が聞こえる。ひとりで悩み、誰にも相談できずに苦しみ続けていたが、この男性の一言で解放されたようだった。

その子どもは心疾患という障がいを持って産まれてきた。心臓手術には母親の同意がいるが、母親はそれを“長生きをしてしまう”という理由で拒否。そこで病院から母親を説得してほしいと松原さんのもとに依頼がきたのだった。

7月26日で相模原障がい者施設殺傷事件から、丸7年が経つ。19人もの人を殺害した植松聖死刑囚は「障がい者は生きていても意味がない。安楽死すればいい」、そう供述した。

これは極端な例の“優生思想”であるが、前述の母親から漏れた安堵の声も、少なからず社会が生み出した優生思想がもたらしたものではないだろうか。

現在、松原さんはNPO法人みぎわを運営し、そういった母親の子どもたちの受け皿となるべく、障がいを持つ子どもの特別養子縁組を行っている。

あの日から約4年。松原さんの腕の中で屈託のない笑顔を見せるのは母親が一度は手術を拒否するも、松原さんの説得で心疾患の大手術を受けることができたダウン症の大和くんだ。

松原さんと大和くん
松原さんと大和くん
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「生後半年で大和は私のところにやってきました。私に託されてから、お母さんからは一切連絡はないですね……」

怒りも悲しさもなく、淡々と話す松原さんの口調からは覚悟が伝わってくる。

今、大和くんは松原さん夫妻と松原さんの実子と一緒に暮らしている。

「私はもともとキリスト教の牧師で、身寄りなく亡くなっていく路上生活者の方々を看取るためのホスピスをやっていました」

そんな松原さんはなぜ、障がいを持つ子どもの支援に乗り出したのかだろうか。