元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第1部】中国経済の崩壊、台湾は国連総会に参加申請…
戦地となる台湾周辺の地形を分析し、政府首脳も参加する机上演習(ウォーゲーム)のコーディネーターも務める元陸上自衛隊最高幹部が、台湾侵攻を完全にシミュレーション。中国の指導者・習近平はなにをきっかけに侵攻を決断するのか。『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』#1
( 東京 )
防衛省では和田誠一防衛大臣(仮名)以下が防衛会議を開催していた。会議では中国軍の活発な活動に対する自衛隊の対応方針が審議され、装備品の稼働率向上、即応態勢の維持、警戒監視態勢の強化が決定された。
和田大臣が各幕僚長に指示した。
「現状では中国軍が台湾に侵攻するとの明白な判断材料はない。しかし、万が一を考えて各自衛隊は警戒態勢等を厳にしてもらいたい」
情報本部通信所及び海空自衛隊の電子情報収集機などが、中国軍の動きについて情報収集と監視活動に全力を傾注することになった。中国軍の異常な動きに対処するため、2週間に1回の予定で開催されていた安全保障会議4大臣会合はここのところ数日おきに開催されていた。
国家安全保障会議は日本の安全保障に関する重要事項及び重大緊急事態への対処を審議するために内閣におかれた機関であり、議長は内閣総理大臣である。4大臣会合のメンバーは総理、官房長官、外務大臣、防衛大臣。これに官房副長官、安全保障局長、内閣情報官、統合幕僚長が加わり、関係省庁局長、陸海空幕僚長、官邸幹部が陪席する。
日本政府としては、中国軍の動きが大規模な演習なのか、台湾侵攻準備なのか判断しかねていた。
警察庁では在日中国人及び華僑に不穏な活動、いわゆる対日有害活動が行われていないかを、また公安調査庁では破壊活動防止法の調査対象団体等に関する調査活動を強化していた。
(続く)
#2『元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第2部】台湾、過激派反政府デモで大混乱』はこちら
#3『元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第3部】反政府活動で混乱する台湾、中国が夜中に重要施設を攻撃』はこちら
#4『元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第4部】石垣島への攻撃開始…空港、発電者がダウン』はこちら
『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』 (講談社+α新書)
山下裕貴
2023年4月19日
990円
216ページ
ISBN:978-4065319598
「問題は、侵攻のあるなしではない。それがいつになるかだ」
中国の台湾侵攻について、各国の軍事・外交専門家はそう話す。
中国の指導者・習近平はなにをきっかけに侵攻を決断するのか。
その際、まず、どのような準備に着手するのか。
アメリカ・台湾はその徴候を察知できるのか――。
元陸上自衛隊最高幹部が、台湾侵攻を完全にシミュレーションした!
陸上自衛隊の第三師団長、陸上幕僚副長、方面総監を務めた元陸将・山下裕貴氏は、沖縄勤務時代には与那国島への部隊配置も担当した。中国人民解放軍、米インド太平洋軍、そしてもちろん自衛隊の戦力を知り尽くす。戦地となる台湾周辺の地形も分析し、政府首脳も参加する机上演習(ウォーゲーム)のコーディネーターも務める、日本最高の専門家で、本書はいわば、「紙上ウォーゲーム」である。
中国と台湾を隔てる台湾海峡は、もっとも短いところで140キロもある。潮の流れが速く、冬場には強風が吹き、濃い霧が発生して、夏場には多くの台風が通過する、自然の要害である。
ロシアによるウクライナ侵略では、地続きの隣国にもかかわらず、弾薬や食料などの輸送(兵站)でロシア軍は非常な困難に直面し、苦戦のもっとも大きな原因となった。
中国は台湾に向け、数十万の大軍を波高い海峡を越えて送り込むことになる。上陸に成功しても、その後の武器・弾薬・燃料・食料・医薬品の輸送は困難をきわめる。
「台湾関係法」に基づき、「有事の場合は介入する」と明言しているアメリカも、中国の障害となる。アメリカ軍が動けば、集団的自衛権が発動され、同盟国の日本・自衛隊も支援に回る。
つまり、自衛隊ははじめて本格的な戦闘を経験することになる。
日米が参戦すれば、中国は台湾、アメリカ、日本の3ヵ国を敵に回し、交戦することを強いられる。
それでも、習近平総書記率いる中国は、「必勝」の戦略を練り上げ、侵攻に踏み切るだろう。
そうなったとき台湾はどこまで抵抗できるのか。
アメリカの来援は間に合うのか。
台湾からわずか110キロの位置にある与那国島は、台湾有事になれば必ず巻き込まれる。与那国島が、戦場になる可能性は高い――。
手に汗握る攻防、迫真の台湾上陸戦分析!