【Xデーマイナス数ヵ月】

202×年〇月〇日、台湾の頼総統がオブザーバーとして国連総会への参加を要請し、両岸の平和安定の演説を行うとの声明を出した。さらに、台湾海峡の平和維持のため、米軍主導の多国籍軍の駐留をアメリカに要請した。

この台湾の動きに中国政府は激しく反発し、台湾周辺で大規模な軍事演習を行って圧力をかけ、国連総会での台湾の演説に断固反対するとの趣旨の発表を行った。

( 北京 )
習近平総書記は、台湾の国連演説と多国籍軍駐留の要請は許容の限度を超えていると判断した。習総書記は中国国内における強権的政策によって政敵をもぐら叩きのようにつぶしてきたが、それでも、浜の真砂が尽きないように反習近平派はなくならない。4期目の主席の座に就かなければ習近平自身に身の危険が及ぶことになる。この国では、権力の座にあるか、石もて追われるか、二つにひとつなのだ。

習総書記は、台湾統一を行って自身の政権基盤を確固たるものにし、歴史に名を残すのはいまだと決心した。

元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第1部】中国経済の崩壊、台湾は国連総会に参加申請…_3

北京市内の統合作戦指揮センターでは、習近平中央軍事委員会主席以下の委員と、人民解放軍の主要幹部が集まり、台湾解放作戦の作戦会議が行われていた。

「それでは説明します」

統合参謀部の作戦部長が口火を切った。

「台湾解放作戦について。敵台湾軍は、陸軍3個軍団10個旅団基幹の総兵力約9万。海軍、戦闘艦20隻。空軍、戦闘機320機をもって抗戦すると判断されます。これに対して我が人民解放軍は、第1次上陸部隊の2個集団軍40個合成旅団及び3個海軍陸戦旅団、第2次上陸部隊の1個集団軍を合わせ総計42万の地上部隊。これに加えて海軍、戦闘艦40隻。空軍、戦闘機1000機をもって解放作戦を行います。

第一段階は台湾国内における法律戦、宣伝戦、情報戦、テロ戦等により台湾市民の反政府意識の高揚及び継戦意識の低下を図ります。次に大規模サイバー攻撃及び電子攻撃による作戦準備電磁打撃を行います。これらは、いわゆる『超限戦』の作戦範囲です。

第二段階は、上陸準備打撃として、敵の戦略目標に対し巡航ミサイル及び戦域ロケット攻撃を行います。引きつづき敵機甲部隊に対する気化爆弾等による航空殲滅攻撃を行います。

第三段階、これらの戦果の下、北部方面軍として東部戦区第73集団軍の3個海軍陸戦旅団基幹が第一波として桃園市から苗栗市にわたる海岸に上陸し、第二波上陸の合成旅団群をもってさらに南北に進攻させ戦果を拡張させます。

南部方面軍として第72集団軍の合成旅団群を台南市北部海岸に上陸させ、台湾の防衛組織の“背骨をへし折り”崩壊させます。なお、作戦にあたっては、都市周辺地域の獲得を優先し、市街地中心部を避けて占領地域の拡大と戦力の損耗回避に努めます。

この際一部の部隊をもって中央方面軍として台中市正面海岸に上陸させ、台北市と台南市を分断します。最後に第2次上陸部隊として第71集団軍を送り込みます」

元陸将が暴露する中国の「台湾侵攻」完全シミュレーション【第1部】中国経済の崩壊、台湾は国連総会に参加申請…_4

この間、前面のスクリーンには中国大陸からの戦力投射、台湾海峡を渡り台湾内陸への進撃経路などの作戦図が投影されていた。

説明を受け、習近平主席が重い一言を口にした。
「諸君。いよいよ中華民族の偉大なる復興を実現する時が来た」

○月○日、台湾統一が決定され、隠密裏に侵攻作戦の準備が開始された。中国政府は「国防法」により戦略物資の備蓄命令を関係国営企業に命じた。戦略物資の中には、リチウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、タングステンなどの希少金属31種が含まれていた。

経済的な動員準備も開始されたのである。