( ハワイ )
オアフ島キャンプ・スミスにある米インド太平洋軍司令部では、司令官のロバートソン海軍大将(仮名)が情報部長及び統合情報センター士官からの報告を聞いていた。それは極東地域に展開する米軍の情報機関が収集した電波情報・ヒューミント情報や日本の情報本部からの情報であり、いずれも中国軍の特異な活動を示すものであった。
「中国軍の兵站組織が福建省などの港湾地区に建設され、軍需物資が大量に送り込まれているのだな」
司令官は、情報部長のほうにゆっくりと顔を向けた。
中国軍は台湾侵攻基盤を整備するために、弾薬、燃料、食料・飲料水、衛生用品、被服などの物資を集積するための兵站基地を建設し、物資の緊急増産を開始していた。
「輸血用血液、代替血液、抗生物質などの医薬品を軍が緊急調達しているために、民間医療機関に影響が及びはじめています。またSNS上では、軍が戦争を始めるのではないかとの情報が流れています」
ロバートソン司令官は緊急の4軍司令官会議を招集するとともに、日本の統合幕僚長及び韓国軍の合同参謀本部議長とテレビ会談を開催し、中国軍の動きについて認識の共有を図ることにした。
中国軍は西太平洋地域で、インド太平洋軍の戦力を凌駕する巨大な戦力を保有している。インド太平洋軍としては、中国軍に立ち向かうためには、米軍の他の統合軍からの戦力増強と日韓の協力が必要だった。