ーー恋愛感情を抱いてしまうから、犯人の言葉を信用してしまい、あの手この手でお金を引っ張られるイメージがあるのですが、恋愛感情を抱いていないのになぜ金銭を詐取されてしまうのでしょうか?
美穂さんの場合は、試しに暗号資産を購入してみないかと誘われます。ポールの指示通りに日本最大の暗号資産取引所への登録を行い、「テスト」と称して暗号資産を購入。すると暗号資産の価値が上がり、「あなたはこれだけ儲けました」と伝えられる。つまり、ポールの指示通りにスマホを操作しただけで「収益が得られた」と錯覚させられるのです。
そこで次は実際の投資を勧められる。美穂さんは手持ちの100万円を投資し、しばらくすると暗号資産の値上がりを示すチャートが送られてくる。そこで8万円を稼ぐ。その結果でポールを信用してしまい、「今は相場がいいから」「元金が多ければ多いほど儲かります」などとそそのかされ、どんどん振込み続けるのです。
その過程で美穂さんは、コロナ融資や友人から借りたお金を使ってしまいます。
ところが、ある程度儲けが出たところで、引き出そうとすると、取引所から「出金のためにはリスク保証金が必要」というメールが届き、さらに追加の現金を要求される。ここで重要なのが、これまで振り込んだ現金と儲けの分を引き出すためには、その保証金を支払わない限りは取り戻せないと思い込まされている点です。資金繰りができなくなった美穂さんは、会社を経営している父親に頼んで2700万円を借り、それも使ってしまった。
今度は「税金の支払いが必要です」と言われ、さすがに詐欺に気づくのです。それにしても、と思いますが、美穂さんとポールとのトーク履歴を全て追っていくと、途中からポールに「兄弟にはお金を借りれないのか?」などと脅迫まがいのメッセージを送りつけられ、恐怖心を抱き、冷静な判断を失っているようにも見えます。