野島作品『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』が与えた影響

ニョロが本格的に増え出すのは90年代。きっかけとなったのは1994年の野島伸司脚本ドラマ『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS)と思われる。

広く知られている話だが、このドラマのタイトルは元々は『人間失格』であった。しかし太宰治の遺族からの抗議もあり「人間」と「失格」の間に中黒が入り、さらにニョロが付くことになったという経緯がある。つまりやむを得ずニョロを付けたというわけだ。

しかし、このニョロ付きタイトルが妙に印象的だったからか、ここからじわじわとニョロが増えていく。『沙粧妙子-最後の事件』(フジテレビ)「いい日旅立ち〜4つの卒業〜」(フジテレビ)『オンリー・ユー〜愛されて〜』(日本テレビ)など、なんかメインタイトルだけだとちょっと足りないかなという時にニョロを付け加えるケースが1クールに1本くらいの頻度で出てきた。

タイトルに「〜」や「¬―」の大盤振る舞い! なぜ日本のドラマはカッコ付けたがるのか!?_1
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この後も続く流れではあるが、基本かつ王道のニョロを付ける理由は、本題だけではちょっと内容がわかりにくいかな、少し具体的にしようかなという時である。

「いい日旅立ち」だと何のドラマかよくわからないけれど「〜4つの卒業〜」が付くと、卒業をテーマにしたドラマなのかなとわかる。そう考えると正直『オンリー・ユー〜愛されて〜』については、抽象的なタイトルに抽象的な副題を重ねていて、今聞いてもさっぱりドラマの内容の想像がつかないけれども(実際は鈴木京香と大沢たかおのラブストーリー)。

乱用時代の2000年代には大河にも「ニョロ付きドラマ」が進出

そして2000年代になるとニョロの数はさらに増え、1クールに2〜3本はあるのが当たり前になってくる。この頃はNHKの大河ドラマすら『利家とまつ〜加賀百万石物語』『江〜姫たちの戦国〜』などとニョロ付きが登場し、ニョロ乱用期に入る。

2000年代にニョロが増えた理由は複数あるが、一つは漫画や小説が原作の作品が増えたということが挙げられる。漫画や小説のタイトル作法とテレビドラマのそれは微妙に違っており、ドラマならこういうタイトルつけるのになあ、でも原作ファンも取り込みたいから原作タイトルも残さなくちゃなあ、の妥協点としてニョロ付きができる。『絶対彼氏〜完全無欠の恋人ロボット〜』(フジテレビ)『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』(フジテレビ)『不信のとき〜ウーマン・ウォーズ〜』(フジテレビ)などが代表例といえよう。