ブームの反動でニョロ離れ?その意図を読み解くと…

そんなニョロ当たり前の現代。ほんの少しではあるが、徐々にニョロを回避するような動きも出ているように思う。

おそらくだが、ニョロが付いているとどうしてもイメージが分散してぼやけてしまうし、妥協の産物感も出るため、避けられるなら避けたいと思っている製作者もいるのではないだろうか。

たとえば、野木亜紀子脚本のドラマは『重版出来!』(TBS)『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)『アンナチュラル』(TBS)『獣になれない私たち』(日本テレビ)『MIU404』(TBS)など、ほとんどニョロが付かない。

坂元裕二脚本作なども、昔はともかく近年の話題作は『Mother』(日本テレビ)『Woman』(日本テレビ)『カルテット』(TBS)などついニョロを付けたくなりそうなタイトルが複数あるが、ニョロは付けていない。

これらが脚本家の意図なのか、組んでいる製作者側の意図なのかはわからないが、むしろ具体的すぎるイメージをタイトル段階で見せてしまうことをよしとしない流れはあるような気がする。2022年10月期最大のヒットドラマ『silent』(フジテレビ)なんかもその一つの例だろう。

大河ドラマと違ってなぜ朝ドラには付かないのか?

ちなみに大河ドラマが複数回ニョロに手を染める中、朝ドラのタイトルには未だに一つもニョロがついていない。もちろんニョロを付けないことについての公式な理由発表などないが、元々簡潔なタイトルを付けるのが慣習になっているのと、半年の長丁場で様々な展開を組み込む必要がある中、具体的なニョロ副題をつけるのはかえって足かせになるというのもあるのではないかと思う。

2023年4月期ドラマには、冒頭であげた2作以外にも『風間公親-教場0-』(フジテレビ)『合理的にあり得ない〜探偵・上水流涼子の解明〜』(フジテレビ)『自由な女神-バックステージ・イン・ニューヨーク-』(フジテレビ)といったニョロ作品がある。

まだまだ日本のドラマはニョロ頼みという状況は続いているが、今後も動向を注視していきたいと思う。いつか、この連載のタイトルにもニョロが付く日が来るかもしれない。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太