〈前編〉

自分を知る人が誰もいない場所へ

「仕事の関係で半年ほど留守にするので、アパートの留守番に来てくれないか」

北海道の大学を卒業して就職した兄から、こんな誘いが来たとき、高田さんは21歳。ひきこもってから4年近くが経っていた。

「同級生がみんな大学に行ってる4年間、まるまるひきこもってたわけですからね。家族が無理に外に出そうとしなかったのは、ありがたかったですけど、自分でもなんとかしないとヤバいと思いつつ、なんとかする力が湧いてこない……、どうしたらいいんだと焦っていました。