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「能登半島地震で家が壊れたことが転機に」珠洲市出身、10年以上ひきこもっていた44歳の男性が見つけた人生の楽しさ
幼いころから集団行動が苦手だった石尾大輔さん(44)は、中学3年のときいじめを受けて不眠と幻聴がひどくなり、統合失調症と診断された。大学を卒業したが就活もできず、10年以上ひきこもった。能登半島地震で珠洲市の実家が半壊し、ひきこもっていた部屋を失ったことで、人生が思いがけない方向に向かう。(前後編の後編)
ルポ〈ひきこもりからの脱出〉28
〈前編〉
人生は何が幸いするかわからない
震災当日、何も持たずに家を飛び出した石尾さんが、物が散乱した家の中から携帯電話を見つけ出したのは1週間後だ。ひきこもりの支援活動をしている林昌則さん(62)から電話をもらったことで、大きな一歩を踏み出す。
林さんは「KHJいしかわ『いまここ親の会』」代表をしており、石川県加賀市でひきこもり当事者向けのシェアハウスを運営している。
実は、震災の1年ほど前にも、林さんに「シェアハウスに来ないか」と声をかけてもらったのだが、そのときは家を出る勇気がなくて断ったのだという。