〈前編〉

人生は何が幸いするかわからない

震災当日、何も持たずに家を飛び出した石尾さんが、物が散乱した家の中から携帯電話を見つけ出したのは1週間後だ。ひきこもりの支援活動をしている林昌則さん(62)から電話をもらったことで、大きな一歩を踏み出す。

林さんは「KHJいしかわ『いまここ親の会』」代表をしており、石川県加賀市でひきこもり当事者向けのシェアハウスを運営している。

実は、震災の1年ほど前にも、林さんに「シェアハウスに来ないか」と声をかけてもらったのだが、そのときは家を出る勇気がなくて断ったのだという。