ドラマはその作品ごとにファンがつくのはもちろんだが、同じテレビ局の同じ放送時間の作品でヒット作が量産されると、そのドラマ枠自体にもファンがつくものである。
主演やレギュラーを務める役者は誰なのか、どういったジャンルやストーリーなのかといったことも重要な要素だが、過去に人気作を多数生み出している枠ならばおもしろいであろう、とドラマファンたちはそのブランド(ドラマ枠)を信頼し、視聴習慣がついているからだ。
日本のドラマ史を振り返り、ドラマ枠のブランド化に成功した代表例を挙げるならば、1990年代に隆盛を極めたフジテレビの月曜21時枠「月9」だろう。『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』(いずれも1991年)、『ロングバケーション』(1996年)といった恋愛ドラマの大ヒット作を量産していた枠である。
一方、近年もっとも権威あるドラマ枠はTBSの日曜21時から放送の「日曜劇場」だと言っていいだろう。『半沢直樹』シリーズ(2013年、2020年)や『下町ロケット』シリーズ(2015年、2018年)などを世に送り出してきた枠で、昨年放送した4作品は全話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)が13~15%と軒並みヒットしている。
だが今年放送の4作品は、そのドラマ枠の“強さ”の指標となる初回の視聴率が、新作になるたびに右肩下がりになっているのだ。
初回視聴率、1月期と比べて
10月期はほぼ半減の異常事態
初回視聴率はそのドラマ枠のブランド力を測る大きな指標と言えるが、今年の「日曜劇場」作品は下記のとおり右肩下がりになってしまっており、ブランド力低下が如実なのである。
≪2022年「日曜劇場」作品/初回の世帯平均視聴率≫
1月期『DCU 〜手錠を持ったダイバー〜』16.8%
4月期『マイファミリー』12.6%
7月期『オールドルーキー』11.2%
10月期『アトムの童(こ)』8.9%
絶好調だった昨年の4作品と比較すると、いかに危機的状況かがわかるのではないだろうか。
≪2021年「日曜劇場」作品/初回の世帯平均視聴率≫
1月期『天国と地獄〜サイコな2人〜』16.8%
4月期『ドラゴン桜』14.8%
7月期『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』14.1%
10月期『日本沈没-希望のひと-』15.8%
昨年は安定して15%前後を獲得していたのに、今年は昨年と同水準なのは1月期の『DCU』のみ。しかも4月期の『マイファミリー』以降は昨年の水準からかなり下回っているだけでなく、新作になるごとに下落している。
これはブランド力の低下ではなく各作品の魅力がなかっただけではと思う人もいるかもしれないが、『マイファミリー』は全話の平均視聴率が12.9%、最終話の視聴率が16.4%と初回を上回る数字を残しており、これはストーリーの面白さが評価されたからだと考えられる。つまりドラマ枠のブランド力が落ちているからこその初回視聴率低下と言えるのだ。
またドラマに限らずテレビ全体の視聴率下落が急速に進んでいるため、右肩下がりになるのは当然だと見る向きもあるだろう。けれど、さすがに昨年の4作品がいずれも15%前後でスタートし、今年1月期も16.8%でスタートしていた枠が、最新作で8.9%とほぼ半減しているというという凋落ぶりは異常事態だ。