レコードデビュー前に25万人以上を熱狂させた

1969年10月10日、キング・クリムゾンのデビューアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』がリリースされた。

ロバート・フリップが、マイケルとピーターのジャイルズの兄弟とともに活動していた前身バンド、ジャイルズ・ジャイルズ&フリップは、ヒット曲が出ずに行き詰っていた。

そこにマルチ・プレーヤーで作曲もできるイアン・マクドナルド、作詞や照明でバンドのイメージを作り上げるピート・シンフィールド、そしてピーターが抜けてグレッグ・レイクが加わり、5人が揃ったのは1968年のこと。

年が明けた1969年1月、バンド名はシンフィールドが作詞した『クリムゾン・キングの宮殿』から取って、キング・クリムゾンとなる。

1969年に発売したキング・クリムゾンのデビューアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』はクラシックやジャズの要素を巧みに取り入れ、プログレッシブロックというジャンルを確立した記念碑的な作品だ。写真は『クリムゾン・キングの宮殿 SHM-CDレガシー・コレクション1980』(2023年6月7日発売、UNIVERSAL MUSIC)のジャケット写真
1969年に発売したキング・クリムゾンのデビューアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』はクラシックやジャズの要素を巧みに取り入れ、プログレッシブロックというジャンルを確立した記念碑的な作品だ。写真は『クリムゾン・キングの宮殿 SHM-CDレガシー・コレクション1980』(2023年6月7日発売、UNIVERSAL MUSIC)のジャケット写真
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難しいフレーズやリズム、複雑な展開を正確に演奏する洗練されたテクニック、即興演奏が生み出す緊張感、シンフィールドの歌詞が描く現実離れした世界観は瞬く間に評判を呼び、レコードデビューも果たさないうちに、キング・クリムゾンは大舞台に立つことになる。

1969年7月5日、ロンドンのハイドパークには25万人以上もの人々が集まっていた。メインアクトはローリング・ストーンズ。メンバーのブライアン・ジョーンズの訃報を受けて急遽、追悼コンサートとなった。

ロンドンにあるハイドパーク 写真/Shutterstock
ロンドンにあるハイドパーク 写真/Shutterstock

のちに彼らの代表曲となる『21世紀のスキッツォイド・マン』で幕を開けると、その強靭なサウンドに会場の空気は一変。そのまま畳み掛けるように次々に展開していき、わずか40分弱で7曲を演奏した。

最後はサイレン音が鳴り響く中、ほとんど無名に近いバンドに対して、地響きのような歓声と拍手が送られた。

キング・クリムゾンのパフォーマンスは、各メディアで称賛の嵐を浴びた。彼らの名前と評判は広く知れ渡り、3か月後の10月にリリースされたデビュー・アルバムは全英5位の大ヒットとなった。