「男性もの」が長年作れなかった意外な理由

–– “あって当たり前”だった腰ゴムを、なぜなくそうと考えたのでしょうか。

グンゼでは長年お客様にご協力いただきアンダーウェアに関するアンケート調査を行っているのですが、ボクサーパンツを穿いたときに一番不快に感じる部分として、必ず「腰回りの締付け」が挙がっていたんです。だから、腰ゴムの締め付けをなくしたいという想いは以前からありました。ただ、なかなかその解決手段が見つからなくて…。

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「AIRZ」では腰ゴムを廃止。ウエスト部分の着用圧を激減させることで、解放感溢れる穿き心地を実現している

––腰ゴムがないと、どうしてもずり下がってしまう、と。

いえ、実は腰ゴムなしでもずり下がらない技術は、AIRZを開発する以前からありました。グンゼでは2011年頃に女性用のショーツで腰ゴムなしの製品を開発し、発売しているんです。

––え、そうだったんですね。

でも、男性向けに腰ゴムなしのボクサーパンツを開発するまでには、そこから7年間を要しました。男性向けが難しかった理由のひとつは、男性は女性に比べ、ウエストの“くびれ”が少ないことにあります。男性の直線的な身体のラインが、腰ゴムのないボクサーパンツのずり下がりを発生させていました。

それからもう1つ、男性と女性の決定的な身体的特徴がありますよね。そう、前立体部分の膨らみです。実はこれもボクサーパンツがずり下がる原因になっています。普通にしていては、どんなものも重力に従って下に落ちようとする力に抗うことは難しいのです。

男性の直線的な身体付き、そして前立体部分が下方向へ向かおうとする力の抑制、この2つに対策を講じるのに7年の月日を費やしたということです。

––男女での体型の違いが、そこまで大きいものだったとは…。もう1つ、AIRZには「アルゴウェーブカット」という独自技術が使われているそうですね。これは、どういうものなのでしょうか。

AIRZは、「縦に伸びにくく、横によく伸びる」素材を採用しています。アルゴウェーブカットは、この生地の特性を活かし、パーツごとにボクサーパンツがずり下がりにくい絶妙の生地方向性や配置を探り当て、生地全体でフィット感を生み出した独自設計のことです。考え抜かれたこの設計パターンについては、ぜひAIZRを手に取ってご覧いただければと思います。

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生地には縦に伸びにくく、横によく伸びる素材を採用している

––それから、ARIZは腰周りだけでなく、裾部分も切りっぱなしになっているのも特徴的です。

通常のボクサーパンツは、裾部分を折り返して縫っています。そうしないと、生地端がほつれてクズがポロポロと出てきてしまうんです。

しかし、グンゼではその部分を技術で解決し、裾を切りっぱなしにすることに成功しました。やはり、いくら腰ゴムがなくても、裾が折り返され生地が二重になると締め付けや違和感を感じてしまいますからね。

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ウエスト・裾部分はカットオフ(切りっぱなし)仕様。生地全体のチカラで安定感を出している