イーストウッドらしからぬ荒唐無稽な娯楽作
移動したら程なくCM予告に続いて本編の上映です。
まだソ連…ソビエト社会主義共和国連邦がアメリカと覇権争いを繰り返していた時代。 1976年9月6日、マッハ3を超えると言われた世界最高速度を誇るソ連の最新鋭戦闘機ミグ25フォックスバットが領空侵犯し、函館空港に強行着陸、操縦していたソ連空軍中尉べレンコはアメリカに亡命して大騒ぎになりました。
その事件をヒントにイギリス人の教師クレイグ・トーマスが書き上げた小説を、クリント・イーストウッドが監督・主演で映画化した国際諜報冒険大作が『ファイヤーフォックス』なのです。
『ダーティハリー』(1971~)シリーズでアクションスターとしての不動の地位をほしいままにしながら、さらに『アウトロー』(1976)や『ダーティファイター』(1980)で監督としての評価も上げ、その演じて殴ってぶっ放しながら演出までする広範にわたる活動は、恐ろしいことに今なお続いておりますが、そんな監督・主演作の中では異色とも言えるほど偏った娯楽性の高い映画でした。
アメリカと冷戦を続けてもう20年以上がたち、双方核兵器をはじめとする兵器の開発競争は熾烈を極め、陸海空全てのジャンルで互いを凌駕すべく新兵器を極秘裏に開発しあっていた1980年代。ソ連が、とんでもない速さとまったく敵から見えない隠密性と、頭で考えただけで攻撃ができる先進性を備えた(もちろん架空の話です)とんでもない戦闘機を開発したので、その秘密を奪ってしまえ、どうせ奪うなら図面とかではなくその機体をまるごと奪ってしまえ、という荒唐無稽に思えるそのストーリーも、数年前に起きたミグ25亡命事件のおかげでリアリティのある出来事として、ジェームズ・ボンド役を断ったクリント・イーストウッドが本格的スパイアクションに挑みます。
とはいっても、あくまでもリアルな国際諜報戦を目指しているので、前半の潜入行は国家から監視され統制され圧迫されている当時のソ連のお国柄をリアルに反映させており、なんとも重たく暗くドンヨリしたムードですが、後半一転して秘密兵器を奪取したクリント扮する元パイロットの諜報員ミッチェル・ガントが、超音速戦闘機ミグ31ファイヤーフォックスを駆って自由主義圏目指して逃避行するあたりから、底が抜けたようなテンションで映画が走り始めます。
そんな秘密兵器の強奪を天下のソビエト連邦が黙って見逃すはずはありません。試験飛行直前のシャワーを浴びてる最中にクリント自慢の鉄拳が顔面直撃で気絶、全裸で簀巻きにされた、恨み骨髄の正規のテストパイロットが共産主義の威信を賭けて、破壊工作を免れたファイヤーフォックス試作2号機で追撃を開始します。
シャワー浴びてる最中にクリントに殴られ気絶させられ全裸で簀巻きにされた、恨み骨髄の正規のテストパイロットが駆って、共産主義の威信を賭けて追撃を開始します。