それってプラスじゃない!

ことあるごとに声高に映画は映画館で見ましょうと喧伝し、何度でも見たい映画があったらディスクメディアで永久保存ですよと言い散らす…そんなワタシですら御多分に洩れず配信メディアの軍門に下り、その怒涛の如きラインナップを享受し堪能する日々であります。

幾多の配信サイトが並び立ち競り合う、まさに群雄割拠の様相を呈していますが、それでもかつてこの世界を覆い尽くしたレンタルビデオのラインナップには届かないのです——旧作に限った話ですが。
ところが、時折、なぜ今まで高画質でリリースされていなかったあの作品が配信されるの??ってミラクルがあるわけですよ。

1979年に公開されたディズニー映画の『ブラックホール』(1979)。
ディズニーの実写映画は1964年の『メリー・ポピンズ』以降、あれこれと野心的な企画に取り組みますが、なかなか実を結ばないという、今では考えられないほどパッとしない時期が続いていました。

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巨大空母型宇宙船や青っぽい宇宙の描写がなつかしい『ブラックホール』
© Mary Evans/amanaimages
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『黒ひげ大旋風』『ラブ・バッグ』(1968)『ベッドかざりとほうき』(1971)『そら見えたぞ、見えないぞ!』(1972)とか、その頃の映画で育った私にとっては、忘れられない映画がいっぱいあります。基本子供向けのコメディですっとぼけた味わいなんだけど、必ず凄い合成が出てくる映画ばかりで、その流れに乗って、折しも『スター・ウォーズ』(1977)でブームになっていた宇宙を舞台にしたSF冒険ものとして登場したのが『ブラックホール』です。

ご存知ない方も多いかと思いますが、前世紀にVHSやレーザーディスクで発売されたきり、DVDにも、Blu-rayにもなっていないこの映画が、「ディズニープラス」にひっそりとラインナップされているではありませんか。すいませんディズニー様! アメリカよりも配信品質が悪かった頃は、そんなのは“ディズニーマイナス”じゃないか!とかクサしていましたが、改善されてドルビーアトモスやドルビービジョンとかのフルスペックになったのも相まって、これなら充分にプラスですよ!

と喜んだのも束の間、最近になってラインナップから外されてるではありませんか!
ほかにも昨年末に鳴り物入りでリリースされたのにワンシーズンで打ち切りが決まった『ウィロー』(1988)の続編シリーズなんて、1年経たないうちに消えちゃったし。

『ブラックホール』は文字通り宇宙のうず潮のように描かれていて、研究が進み、その姿がだんだんわかってきた今から見たらおかしいし、確かに立派とは言えない映画だし褒められたもんじゃないかもしれないけど、ゴシック様式の巨大宇宙船シグナス号とかロボコンみたいなポンコツロボットとが出てきたり、楽しい映画だったのに…と言うか、今見たらどのぐらいなのか、そのうち暇な時にでも確かめようと思ってたら、予告なく抜き打ちで消去ですよ。

恐ろしいです。姿なきボスの意思にはユーザーは逆らえないデストピアの様相を呈してきましたな。