『イデオン』で受けた心の傷を埋めるすごい映画
いやーお恥ずかしい。 高校2年であれば相当現実との折り合いもついたはずだと思って書き始めたら、高2の俺をひもとくには中2の頃の話から始めないとならず、そのこじれっぷりが高校2年の俺を汚染し、さらには還暦まであと2年の俺までもこじれさせるという、厨二のルサンチマン恐るべしです。
その流れでいけば富野喜幸監督(現・富野由悠季)の『伝説巨神イデオン』も、本放送打ち切りの挙句、劇場版で公開されたのが1982年7月15日。前回の『ガンダム』のような勢いで鼻息荒く初日に観に行っているかといえばそんなことなかったんです。 恐らく公開直前に、いわゆるアニメファンよりも客層を広げようと始めたキャンペーン…名付けて「明るいイデオン」が原因なんです。
深刻で重たい内容の『イデオン』を無理やり面白く見せようと、当時アニメといえば必ずついて回っていた読者投稿欄のパロディイラストめいたものを、わざわざ大枚はたいて本家のアニメ会社が本家の作画スタッフを投入して最高品質でアニメ化した、まあいわばPVみたいなものなんですけど、それを見せたところで別に映画館でかかる映画がそういう質の面白さではないのに、どうしてこんなもん作っちゃったのか高校2年生でも理解に苦しみます。
しかもそのパロディ由来のギャグが、どうにもこうにも内輪受けでちっとも笑えない。この、大人が一生懸命作っているのに面白くない虚無感は、私の心深くに“パロディ嫌い”という爪痕を刻むことになるのです。 誰も幸せにならない結果しか残さないこのキャンペーンは、私のアニメ熱を一気に冷却させました。
その間隙を突いて私の観たいリストに彗星の如く現れたのは、1982年夏公開のSF超大作でした。 雨が降り続ける近未来の夜の街の混沌を切り裂くように、空を飛ぶパトカーの光芒。 ロングコートの刑事が人ごみを逃げる犯人に向かって銃を構える。 画面左右から疾走感あふれるタイトルが滑り込み、合体。 「『ブレードランナー』」。 内海賢二さんのホットなタイトルコールが期待感を煽ります。
『スター・ウォーズ』(1977~)のハン・ソロ、『レイダース 失われたアーク』(1981) のインディ・ジョーンズで、革新的なアクションスペクタクルの看板スターの地位を確立したハリソン・フォードが主演で、近未来都市を舞台にした空飛ぶ自動車のカーチェイス、そして銃撃戦。
ヤバい。すごいアクション映画がやってくる。